相手方が契約書を提示してきた場合

相手方が契約書を提示してきた場合

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相手方が契約書を提示してきた場合

Q.相手方が用意した契約書に気になる条項がありました。
契約書に絶対に入れてはならない条項や入れると危険な条項はありますか?
気をつけなければいけない事項について教えてください。

A.契約書に規定することで、かえって債権回収が困難になったり、契約の全部または一部を無効とされたりしてしまう条項があるので、契約書を作成する際には、そのような条項がないかをあらかじめ確認することが必要です。

 

契約書に規定してはいけない条項について

契約自由の原則と、その例外について

本来、当事者の意思によって契約内容を自由に決めることができるのが原則となっています(これを契約自由の原則といいます)。
しかし、たとえ契約当事者が契約内容について合意したとしても、その契約内容が公序良俗に反する場合や、消費者保護や弱者保護を図るために特別法で規定された強行規定に反する場合には、例外的に契約内容どおりの効果が認められないことがあります。
 

契約の全部または一部を無効にしてしまうような条項

(1)公序良俗に反する条項
契約の全部または一部が公序良俗違反により無効となるのは、公の秩序または善良の風俗に反する事項を目的とする契約である場合です。

たとえば、商取引の場面において公序良俗違反として契約の一部の条項が無効になる例として、売買契約書に損害賠償額の予定について規定したときに、その賠償額が著しく高額である場合が挙げられます。

その場合には、暴利行為として公序良俗に反するものとして、その賠償額の予定についての条項の全部または一部が無効とされることになります。
 
(2)強行規定に反する条項
強行規定とは、公の秩序に関する規定として、契約当事者の意思に関わらず強制的に適用される規定です。
当事者が強行規定に反するような契約をした場合、その契約は、強行規定に反する部分について無効となってしまいます。

たとえば、元請業者が下請業者との間で、ある製品の製造委託を内容とする契約を締結する際に、「元請業者は、当該製品を自由に返品することができる」というような条項を契約書に規定した場合を例に説明します。

この場合、元請業者と下請業者との間の契約が、特別法である下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」といいます)の適用のある親事業者と下請事業者との間の契約に該当するときには、下請法の原則として返品を禁止する強行規定(下請法4条1項4号)が適用されることになります。

ですから、たとえ契約当事者間で上記のように広く返品を認める条項を規定したとしても、そのような条項は、上述した返品を禁止する強行規定に反するものとして、無効になる可能性があります。

ここで、もし、契約当事者間で合意した契約の条項が強行規定に反して無効になるにもかかわらず、契約当事者が、その契約の条項どおりに実行することができると誤解して、強行規定に反する行為を行ったりすると、行政庁による勧告や違反事実の公表がなされるおそれがあります。
法令遵守が声高に叫ばれる今日においては、行政庁による勧告や公表がなされてしまうと、自社の社会的信用を失墜させてしまうことにもなりかねません。

ですから、知らず知らずのうちに、強行規定に反する行為をしてしまうことのないよう、契約を締結するときには、その分野において特別法が存在するかどうか、特別法が存在する場合、どのような規定なのかを事前に確認したうえで、契約書に規定する条項を作成することが必要です。
 

契約書に規定すると危険な条項について

条項に曖昧な規定がある場合

契約書のなかの規定が曖昧である場合には、取引先が、その規定が曖昧であることをうまく利用して、代金の支払を引き延ばすという事態が生じる可能性があります。

たとえば、「商品の品質が十分であることが確認された後○○日以内に代金を支払う」というような形で代金支払の時期を定めてしまった場合、買主は、まだ商品の品質が十分であると確認されていないとして、売主からの代金の支払になかなか応じないことが考えられます。

ですから、代金支払の時期といった、契約書において明確に定めておかなければならない条項に、「商品の品質が十分であることが確認された」などの曖昧な規定を盛り込むことは、債権回収の観点からすると、危険な条項であると言わざるをえません。

また、多義的な意味で使われる可能性のある言葉を使用する場合にも、上記と同様の問題を生じさせるおそれがあります。

たとえば、賃貸借契約において家主から要求されることのある権利金には、場所的な利益の対価としての意味や賃料の一部前払としての意味、賃借権の譲渡を認めることに対する対価としての意味など多様な意味があるため、どの意味で使用されているかを巡って後日紛争となることがあります。

そこで、契約書において、多義的な意味で使われる可能性のある言葉を使用する必要がある場合には、どういう意味で使用するのかという点についての定義規定を設けることが不可欠でしょう。
 

協議事項に適さないにもかかわらず協議事項とする場合

たとえば、「甲の責に帰すべき事由なく契約に定められた期日に遅れて商品を納入することになる場合には、甲乙協議の上残代金の支払時期を決定する」というような形で代金支払の時期を定めてしまった場合、取引先との協議が成立しない限り残代金の支払を求めることができなくなるおそれがあることから、代金支払の時期については、協議事項という形で定めることはしないようにすることが肝要です。

もし、取引先の意向で、代金支払の時期については協議事項とすることが避けられない場合には、たとえば、「協議が成立しなかったときには、残代金を直ちに支払わなければならない」というような形などで、協議が成立しなかった場合に対処する条項を別途規定する必要があります。
 

公正証書の作成・即決和解について

公正証書

単に契約書を作成しただけでは、後日、債務者が支払って来なかった場合には、別途、民事訴訟等を提起しなければならないことになります。

しかし、契約締結時に、公正証書を作成して、執行認諾文言(万が一、債務を履行しなかった場合には、直ちに強制執行を受けても文句を言わないといった旨の記載)を付しておけば、金銭債権の請求については確定判決と同様の効力を有することになりますので、債務者が契約に反して支払わない場合には、訴訟提起等の面倒な手続きをすることなく、公正証書をもとに裁判所に対して強制執行手続の申立をすることができます。

契約の際に公正証書まで作成するということは、現実にはなかなか難しいのですが、相手方の履行に不安がある場合には、公正証書の作成を契約の条件とすることをお勧めします。
 

即決和解(起訴前の和解)

即決和解とは、裁判所において行う和解の一種です。
簡易裁判所に当事者が和解の申立てをし、和解が成立したとき、その内容を調書に記載してもらうことにより、強制執行が可能になります。当事者間の話し合いで大体合意しているような場合に有用な手段です。

当事者間の合意内容を公正証書にしてもよいのですが、即決和解の場合には、公正証書と違い、金銭債務などに限らず、土地の明渡請求などにも強制執行が可能になるというメリットがあります。

ですから、一定期間内に金銭債務の履行が得られなかった場合には、代物弁済として、債務者が所有する不動産の所有権を取得する旨の合意を即決和解に盛り込んでおけば、後日、債権の回収が得られなかった場合には、債権者は即決和解に基づいて強制執行を行って債権回収を図ることができることになります。

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