採用内定を取り消したいとき

当社は今年4月より新卒の大学生5名を採用する予定となり、
昨年10月1日、彼らに内定通知を発し、彼らから入社誓約書も得ました。
しかし、今年2月半ばに、以下のような事態が発生したため、当初の予定通りの採用は見合わせたいと考えています。
採用内定を取り消すことはできるでしょうか。

(1) 当該学生のうちの1人が採用の際の提出書類に虚偽の記載をしていたことが発覚した
(2) 内定通知を発した後に経営状況が厳しくなり、事業を縮小することになったため、
内定者全員を採用することが困難な状況となった

会社側が採用内定通知を自由に取り消すことはできません。

(1)においても(2)においても、一定の場合(→2 どのような場合に内定を取り消せるか)にしか内定通知を取り消すことはできないと考えられます。
なお、不適法な内定取り消しを行った場合には、以下のように会社が大きな責任を負うおそれがあります。

<不適切な対応例>

就労開始直前になって当初の予定どおり人員を増やすことを中止しようと考え、内定通知を発した社員に対し、一方的に内定の取り消しを言い渡した。
  ▼
当該社員のうちの一人が不当に内定を取り消されたとして、内定取り消し無効及び数ヶ月の賃金相当額、慰謝料等の損害賠償の支払を求めて訴訟提起した。
その後、当該社員の主張を認める判決が下され、会社は多額の損害賠償を支払わなければならなくなるともに、当該社員を雇用しなければならないこととなった。

このような事態を避けるために、弁護士への相談をお勧めします。

<当事務所による解決例>

詳しい事情を伺った上で、各事案に合わせて
①内定を取り消す合理的理由があるといえるか
②内定取消手続はどのように行えばよいか
③その後に紛争とならないためにはどのような点に気をつければよいか
等を法的観点よりアドバイスいたします。
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解雇された社員が、不当な内定取り消しであるとして賃金の支払や損害賠償等の請求を行ってきた場合には、私たち弁護士が、御社に代わって交渉にあたります。
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上記アドバイスに従って対応したにもかかわらず訴訟を提起された場合には、事情をよく把握している私たち弁護士が、御社の訴訟代理人として、御社の対処が適切であったことを主張することが可能であるため、安心です。
上記アドバイスを受けずに内定取り消しを行い訴訟提起されてしまった場合にも、私たち弁護士が、御社の訴訟代理人として、出来る限り御社の行為の正当性を主張し、御社の受ける不利益が少なくなるよう最大限努力します。

なお、以下では、どのような場合に採用内定を取り消すことが許されるか、詳しくご説明します。

1 採用内定を自由に取り消せるか

採用内定者と企業は、卒業できないことその他一定の事由による解約権を留保している労働契約(解約権留保付労働契約)を締結していると考えられています。
そして、このような関係にある以上、現在就労はしていないものの、採用内定者の地位は、一定の試用期間を付して雇用契約に入った者の試用期間中の地位と基本的に異なるところはないとみるべきであるとされています。
つまり、解雇と同様に考えるべきであり、採用内定者との合意がないにもかかわらず自由にその内定を取り消すことはできません。

2 どのような場合に内定を取り消せるか

(1) 内定者に関する事由による場合

① 採用内定通知、誓約書等に記載されている内定取消事由があるとき
まず、これらに記載されているものに該当する事由が内定者に生じた場合は、その内容が不合理なものでない限り、内定を取り消すことができると考えられます。

② ①以外のとき
採用内定通知、誓約書等に記載されていない理由による場合でも、内定を取り消すことができる場合があります。
もっとも、判例上、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって解約留保権の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られるとされています。

では、以下の場合はどうでしょうか。

(ア) 提出書類に虚偽の記載を行っていたことが発覚したとき
その虚偽記載の内容・程度が重大なもので、それによって従業員として不適格であることが明らかなときは認められる可能性が高いと考えられます。
(イ) 内定者の健康状態が悪いとき
採用内定後に、勤務に耐えられないと予測されるほど著しく健康状態が悪化した場合には原則認められると考えられます。
(ウ) 採用内定後、内定者が傷害で逮捕されたとき
内定者が、傷害にかかわらず、相当程度に重大な犯罪行為を行った場合には、認められる可能性が高いと考えられます。
(エ)卒業予定であった高校または大学等を卒業できなかったとき
卒業することを前提に採用したのですから、原則認められると考えられます。

ただ、内定者についてどのような事情があれば内定取消が許されるかは具体的な事情によって結論が異なるものと考えられ、安易に内定取り消しできると判断することは危険です。
そこで、各事案ごとに弁護士に相談し、従来の判例などに照らした専門家の判断を仰ぐことをおすすめします。

(2)企業側の都合によるもの

業務の縮小など企業側の都合による事由で内定を取り消す場合は、原則整理解雇の要件を満たす必要があります。
判例上、整理解雇は以下の4つの基準を満たすことが必要であるとされています。
①整理解雇の必要性があること
②整理解雇回避のための努力を尽くしたこと
③解雇の対象者選定について、客観的・合理的な基準を作成し、適正にこれを運用したこと
④使用者が整理解雇を行うにあたって、当該労働者、労働組合と誠実かつ十分に協議しなければならないこと
よって、少なくとも、業務上内定取り消しを行う必要性があり、内定取り消しを回避する努力を十分行ったにもかかわらず他の手段がなくやむを得ず内定取り消しを行う場合に、初めて許されるということになります。
なお、採用内定取り消しに関しては、過去に旧労働省より指針が発表されています(→平成5年6月24日 労働省発職第134号)。
これによれば、会社は採用内定取り消しの対象となった学生・生徒の就職先の確保について最大限の努力を行わなければならないとされています。

企業側の事由により内定を取り消す場合には、後々損害賠償を請求されるなどの紛争が起こらないよう、相手方に対し十分に事情の説明を行い、新しい就職先の紹介に努めるなど、相手方に与える不利益を最小限に抑える努力をしましょう。

3 不当な内定取消の効果

正当な理由もないのに内定が取り消された場合には、その内定取り消しは無効となります。
そして、会社が訴えられた場合、内定を取り消した相手につき依然として会社の従業員たる地位が認められるだけでなく、それを前提にすれば支払われるべきであった賃金や、内定取消によって被った慰謝料の支払いが命じられるおそれがあります。

4 内定取消の手続

前述のように、採用内定取り消しと解雇は原則同様に考えられていることから、内定を取り消す際には解雇と同様の手続きを取りましょう。
よって、この場合、原則、少なくとも30日前にその予告を行うことが必要であり、30日前に予告をしない場合には30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法第21条)。十分注意して下さい。

<平成5年6月24日 労働省発職第134号(関連部分抜粋)>

事業主は、次の事項に十分考慮すべきである。

①事業主は、採用内定を取り消さないものとする。

②事業主は、採用内定取り消しを防止するため、最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講じるものとする。
なお、採用内定の時点で労働契約が成立したと見られる場合には、採用内定取り消しは労働契約の解除に相当し、解雇の場合と同様、合理的理由がない場合には取消しが無効とされることについて、事業者は十分留意するものとする。

③事業主は、やむを得ない事情によりどうしても採用内定取消し又は入職時期繰り下げを検討しなければならない場合には、あらかじめ公共職業安定所に通知するとともに、公共職業安定所の指導を尊重するものとする。
この場合、解雇予告手当について定めた同法第26条等関係法令に抵触することのないよう十分留意するものとする。

なお、事業主は、採用内定取り消しの対象となった学生・生徒の就職先の確保について最大限の努力を行うとともに、採用内定取消し又は入職時期繰下げを受けた学生・生徒からの補償等の要求には誠意をもって対応するものとする。

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