試用期間中の社員に問題があるとき

試用期間中の社員に問題があるとき

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試用期間中の社員に問題があるとき

当社は入社後3ヶ月の試用期間を設けています。
新入社員Aは入社後もうすぐ3ヶ月となりますが、欠勤も多く勤務態度も悪いため、このまま本採用することに不安を感じています。
試用期間を延長してもう少し様子を見たり、試用期間の終了と同時に本採用を拒否したりすることは可能でしょうか。

試用期間の延長はこれを必要とする特別の理由のない限り認められません。
(→1 試用期間を延長したいとき)
また、本採用拒否についても、会社と社員Aとの間には既に労働契約が成立しているため、限定された場合にしか認められません。
(→2 本採用を拒否したいとき)
不適切に試用期間の延長や本採用拒否が行われたような場合には、以下のように損害賠償等を請求されるおそれがあります。

<不適切な対処例>

やはりもう少し様子を見たいと考えたため、新入社員Aに対し「試用期間を半年延長する」と口頭で一方的に出した。半年間試用期間を続けたが、やはり勤務態度があまりよくないため本採用を拒否した。
  ▼
Aが会社を辞めた後に訴訟を提起し、会社はAに対し、試用期間を一方的に延長したことによる損害賠償を支払わなくてはならなくなった。
また、本採用拒否についても無効であるという判決が下され、Aを従業員として雇わざるを得なくなった。

このような事態を避けるために、弁護士への相談をお勧めします。

<当事務所による解決例>

詳しい事情を伺った上で、各事案に合わせて
①試用期間を延長できる場合にあたるか
②本採用を拒否できる場合にあたるか
③どうしても当該社員を雇用したくないと考える事情がある場合、どのように対処すれば後の紛争を避けられるか
等について法的観点よりアドバイスします。
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試用期間の延長または本採用拒否を受けた社員が、会社の対応を不当なものだとして争ってきた場合には、私たち弁護士が、御社に代わって交渉にあたります。
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上記アドバイスに従って対処したにもかかわらず訴訟を提起された場合には、事情をよく把握している私たち弁護士が、御社の訴訟代理人として、御社の対処が適切であったことを主張することが可能であるため、安心です。
上記アドバイスを受けずに行った対処につき訴訟提起されてしまった場合にも、私たち弁護士が、御社の訴訟代理人として、出来る限り御社の行為の正当性を主張し、御社の受ける不利益が少なくなるよう最大限努力します。

なお、以下では具体的にどのような場合に試用期間の延長や本採用拒否が認められるかにつきご説明します。

1 試用期間を延長したいとき

試用期間の定めは労働者の事業場における労働条件に大きな影響を与え不利益を及ぼすものであるため、試用期間の延長はこれを必要とする特別の理由のない限り法的に行うことは許されず、またその理由は合理的なものでなければなりません。さらに、それを告知する形式も明確かつ厳粛でなければならないとされています。

(1) 就業規則等に定められた延長事由によるとき

延長事由に該当すれば、原則試用期間を延長することができます。
もっとも、就業規則に規定されている延長事由がこれを必要とする特別の理由がないと考えられる場合や社会通念上合理的なものでない場合には、当該規定は無効な規定となりますので、延長も認められないことになります。

(2) 就業規則等に定めがない事由によるとき

この場合、試用期間が延長されることは労働者にとって通常想定されていないものと考えられますので、よほどの理由がない限り一方的に延長することは認められないと考えられます。

この「よほどの理由」の判断においては、
・もともとの試用期間の長さが労働者の適格性を判断するのに十分なものであったか、
・今回延長しようとする期間がどの程度の長さのものか、延長する理由が客観的に判断できる明確なものであるか、
・延長をどうしても必要とするような合理的事情であるか
といった様々な事情が考慮されるものと考えられます。

たとえば、出勤成績が著しく悪いなど客観的に判断できるような事情で、会社としてはどうしても直ちに本採用とするのがはばかられるような場合は、3ヶ月の試用期間を数週間ほど延長してしばらく様子をみることも許される場合があるでしょう。

2 本採用を拒否したいとき

(1) 本採用を自由に拒否できるか

試用期間において、会社と労働者との間では労働者が職員として不適格であると認めたときは解約できる旨の解約権が留保された労働契約が締結されていると考えられます。
そして、会社は労働者の雇い入れそのものについては広い範囲の自由を有するけれども、いったん労働者を雇い入れた後はその地位を一方的に奪うことはできません。
つまり、試用期間といえども、企業と労働者の間には労働契約が成立しているのですから、本採用拒否は「採用拒否」ではなく「解雇」にあたり、本採用拒否をすることができるのは解雇の場合と同様に極めて限定された場合ということになります。

(2) どのような場合に本採用を拒否できるか

「解雇」にあたるとはいっても、試用期間はその期間の勤務状況を見て本採用するか考慮するために設けられているものですから、通常の解雇の場合よりも広い範囲で本採用拒否が認められるとは考えられています。なお、判例上「解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合」という基準が示されています。
しかし、通常解雇より制限が緩和されることを理由に本採用拒否を認めた判例は少なく、本採用拒否が認められる場合と通常解雇が許される場合(→解雇したい社員がいるとき)と同様に考えておいた方が無難であるといえ
ます。
もっとも、特殊な技能に着目されて採用されたような場合は、その技能の程度を見極める試用期間の意義も大きいものであり、採用に見合う能力が認められない場合に通常解雇よりも緩やかな要件で本採用を拒否することが認められる場合もあるでしょう。

(3) 本採用を拒否する際の手続

試用期間中の者でも14日を超えて引き続き使用されるに至ったものについては、解雇するには原則労働基準法上の解雇予告手続(労働基準法第20条第1項)が必要です。十分注意してください。

 

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