社員(従業員)を解雇するには?解雇できる条件について弁護士が解説

社員(従業員)を解雇するには?解雇できる条件について弁護士が解説

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社員を解雇する条件について弁護士が解説

解雇したい社員を解雇できるか(よくあるご質問)

当社には以下のような問題のある社員がおり、できれば彼らを解雇したい
と考えています。解雇することは可能でしょうか?

① 社員A : 病気が発覚し入院することとなった
② 社員B : 勤務態度が悪く、周りの社員の士気を下げるなど悪影響を及ぼしている
③ 社員C : 教職として採用したが、当初思っていたより基礎学力が著しく不足している
④ 社員D : 入社時に提出した書類における経歴を詐称していたことが発覚した
⑤ 社員E : 既婚者であるにもかかわらず、同じ部署の未婚の女子社員と交際していることが発覚した

解雇が許される場合は極めて限定されます。

①~⑤の全ての場合において当該事由が存在するだけでは足りず、解雇権の濫用とされないだけの正当な理由、合理的理由が必要です。(→2 どのような場合に正当な理由があるといえるか)
解雇できる正当な理由がなかったのに不当に解雇してしまった場合、会社は以下のように大きな責任を負うおそれがあります。

<不適切な対応例>

問題のある社員数名に対し、とりあえず1ヶ月分の給料を支払うから辞めてくれと言って、一方的に解雇を言い渡した。

当該社員のうちの一人が不当に解雇されたとして、解雇無効の訴え及び給与の支払いを求めて訴訟提起した。
解雇から1年後、社員の主張を認める判決が下され、当該社員に1年分の給与相当額を支払うとともに、当該社員を職場復帰させなければならないこととなった。
この訴訟結果を知った他の解雇された社員も次々と同様の訴えを提起し、最終的に会社は多額の金銭を支払わねばならない結果となった。

このような事態を避けるために、弁護士への相談をお勧めします。

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当事務所による解決例

詳しい事情を伺った上で、各事案に合わせて
①まず解雇の理由が合理的であるといえるものであるか
②解雇手続はどのような流れで行えばよいか
③解雇後に紛争とならないためにはどのような点に気をつければよいか
等を法的観点よりアドバイスします。

解雇された社員が、不当解雇であるとして賃金や損害賠償の請求を行ってきた場合には、私たち弁護士が、御社に代わって交渉にあたります。

上記アドバイスに従って対応したにもかかわらず訴訟を提起された場合には、事情をよく把握している私たち弁護士が、御社の訴訟代理人として、御社の対処が適切であったことを主張することが可能であるため、安心です。
上記アドバイスを受けずに解雇を行い訴訟提起されてしまった場合にも、私たち弁護士が、御社の訴訟代理人として、出来る限り御社の行為の正当性を主張し、御社の受ける不利益が少なくなるよう最大限努力します。

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なお、以下ではどのような場合に解雇に正当な理由があるとされるのか具体的にご説明します。

1 解雇権濫用の禁止

解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権を濫用したものとして無効とされます(労働基準法第18条2項)。
すなわち、解雇が有効とされるためには、解雇権の濫用とされないだけの正当な理由、合理的理由が必要なのです。
そこで、解雇する前には、当該事案が正当な理由があると認められる場合にあたるのかを十分に調査する場合があります。

2 どのような場合正当な理由があるといえるか

(1) 解雇理由

まず、解雇の理由が正当なものである必要があります。設問のような事例でいえば、以下のように考えられます。

①社員の入院
数週間の入院で病気自体が治療可能な場合には、解雇は原則認められないでしょう。
職場への復帰に予測できない程度の長期間を要するような場合には、労務提供が不能であるとして解雇しうると考えられます。
また、多くの就業規則には解雇事由として「病気により●●間休業したとき」と定められている場合が多いと思いますが、その場合には定められた期間より短期間で解雇することは原則認められません。
なお、病気の社員を解雇する際には、労働基準法による時期の制限(→<法律による解雇の制限>)にも留意してください。

②勤務態度や勤務状況の不良
ただ勤務態度や勤務状況が悪いだけでは解雇は認められず、解雇がやむを得ないと考えられる正当な理由が必要となります。
そこで、
・程度が甚だしいこと
・本人に帰責されるものであること
・解雇に至るまで個別の注意等の方策を尽くしたこと
などの事情が必要となってくるものと考えられます。

③労働能力の欠如
当該社員につき一定の労働能力を有していることを想定して採用したものの実際の労働能力は著しく欠如していたような場合、その程度によっては解雇しうると考えられます。
もっとも、このような理由で解雇するためには、使用者としては直ちに解雇するのではなく、当該不十分な点を忠告し労働能力向上のための援助をしたうえでなお是正されない場合に初めて解雇を行うという配慮が必要であると考えられます。

④経歴詐称
重大な経歴詐称があった場合には解雇しうると考えられます。
もっとも、全ての場合に解雇できるわけではありません。具体的には、以下のような点を考慮します。

・就業規則に経歴詐称を解雇事由とする旨の有無
・経歴を詐称した態様
・意識的に詐称されたものであるか
・詐称された経歴の重要性の程度
・詐称部分と企業・詐称者が従事している業務内容との関連性
・使用者の提示していた求人条件に触れるものであるか
・使用者が労働契約締結前に真実の経歴を知っていれば採用していなかったと考えられるか

以上のような点からその経歴詐称行為が重大な信義則違反にあたる場合には解雇も許されるもの
と考えられます。

⑤既婚社員による社内交際
このような私生活上の行為の理由では容易に解雇は認められないと考えられます。
もっとも、この行為により会社の業務、会社の信用に著しい影響を及ぼした場合には解雇が認められることもあります。

(2) 解雇に至る経緯

また、当該理由自体は解雇理由として正当なものだとしても、解雇方法が慎重さを欠いている場合には解雇権の濫用と判断されることもあります。
そこで、できるだけ解雇以外の方法によって解決しようとしたという経緯が必要であると考えられます。
例えば、勤務態度の悪い社員に対して処分を行う際には最初から懲戒解雇を行うというのではなく、まずは戒告・訓戒などの解雇以外の懲戒処分、それでも改まらない場合には諭旨解雇を試み、それも困難な場合に最終手段として懲戒解雇を考えるというステップが重要です。

(3)  解雇できるか不安なとき

当該解雇に正当な理由があったか否かについては各事案における具体的事情によって結論が異なってきます。不当解雇を行った場合には会社が大きな責任を負うおそれがある(→3 不当解雇の効果)ことからも安易な判断は禁物です。そこで、解雇できるか不安なときには、弁護士に具体的事情を詳しく説明して、今までの判例などに照らした判断を仰いでください。
解雇時点では被解雇者が何も文句を言わず穏便に解雇できると思われる状況があっても、当該被解雇者がその後再就職で困難な状況に直面するなどして、やはり解雇は無効であるなどと争うおそれがあることを常に忘れないようにしてください。

3 経済情勢悪化等を理由としてやむを得ず解雇をする場合

新型コロナウイルス感染症の影響で、業績が悪化し、やむを得ず人員整理をしなければならなくなったという相談が多くなっております。そのような経営上の事情で従業員を解雇する場合でも、容易に正当な解雇として認められるわけではなく、整理解雇として有効となるための要件を満たす必要がありますので、注意が必要です。具体的には(→新形コロナウイルスの影響により整理解雇する場合)をご参照ください。

4 解雇時の手続き

解雇する場合には、解雇する従業員に対し、少なくとも30日前に解雇の予告をする必要があり、解雇の予告を行わない場合は、解雇と同時に30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません。

予告から解雇までの日数が30日に満たない場合は、その不足日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払わう必要があります。

ただし、従業員に非があり懲戒解雇を行うケースでは、所轄労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けることで、解雇予告手当を支払う必要がなくなる場合もあります。

5 正社員の解雇とパート社員・アルバイト社員の解雇

上記は主に正社員の解雇を想定したものとなりますが、パート社員・アルバイト社員の解雇では、他にも注意する点がございます。

パート社員・アルバイト社員の場合、雇用契約が有期のケースが多いですが、有期の雇用契約の場合、労働契約法第17条により解雇が制限されます。有期労働契約については、使用者と労働者が合意して契約期間を定めているため、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないこととされているのです。この「やむを得ない事由」があるかどうかは、期間の定めのない労働契約の場合の解雇の正当性に比べ、より厳しく判断されます。

よって、正社員だけではなく、パート社員・アルバイト社員の解雇でも、注意をして進めていく必要がございます。

6 不当解雇の効果

解雇につき正当な理由はなかったものと判断された場合、その解雇は無効となります。つまり、被解雇者との雇用契約は解雇通告後もそのまま継続しているということになるのです。
よって、後々、被解雇者が会社に対し解雇の無効を主張して訴えた場合、解雇されなければ得られたであろう賃金を支払う義務が生じたり、被解雇者の職場復帰を命じられたりするおそれがあります。1年前に解雇したにもかかわらず、突然1年分の賃金を一度に請求されるなどということにもなりかねません。

また、被解雇者には会社内に友人、知人がいる場合が多いでしょうから、会社内の雰囲気や士気も芳しくないものになるおそれがあります。被解雇者が、会社に一方的に不当に解雇されたなどと声高に主張し、それが現在も働いている従業員の耳に入ることは、他の従業員が会社に対する不信感や嫌悪感を抱くきっかけとなるでしょう。
よって、社員を解雇する際には極めて慎重に行わなければなりません。

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<法律による解雇の制限>

①時期の制限
・労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後30日間(労働基準法第19条1項)
・女性が産前6週間、産後8週間の休みをとっている期間及びその後30日間(労働基準法第19条1項、第65条)

②差別的な理由に基づく解雇
・国籍・信条・社会的身分を理由とした解雇(労働基準法第3条)
・女性であることを理由とする解雇(雇用機会均等法第8条1項)
・婚姻・妊娠・出産を理由とする解雇(同2,3項)
・労働基準法に基づき産前6週間、産後8週間の休業をしたことを理由とする解雇(同3項)

③労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、またはこれを結成しようとしたこと、正当な組合活動をしたことを理由とする解雇(労働組合法第7条1号、4号)

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