セクハラ被害を申告されたら

セクハラ被害を申告されたら

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セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)被害を申告された場合の対応

 

1 セクハラ被害の申告への対応

(1)入念な事情聴取と資料収集

セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)行為は、性的な言動によって、他者に対して精神的・身体的な不快感・苦痛をもたらす行為ですから、被害の申告があった場合には、迅速に対応する必要があります。

第一に、事実関係を迅速かつ正確に把握することが必要です。

会社は、労働者が生命・身体等の安全を確保して勤務できるように配慮する義務を負っていますので(労働契約法5条)、被害状況の確認は必須です。他方、被害者の話のみを鵜呑みにして即刻解雇などの処分を行ってしまうと、これが事実でなかった場合や、事実であっても即刻解雇は重すぎる処分であったと判断された場合には、不当解雇として会社も大きな責任を負うおそれがありますので、両当事者からよく事情を聴取することが不可欠です。

・被害者からのヒアリング

セクハラ行為を受けたとする従業員からは、その心情に配慮しつつも「いつ、どこで、誰が、どのような言動をしたか」を具体的に聴取し、どのような行為があったのか、そしてそれがセクハラ行為に該当するのかを確認します。

また、申告内容を裏付ける客観的資料(性的言動を含むメッセージ、被害状況を記録した音声・動画、他の従業員その他第三者的立場の人間の証言)がある場合には、可能な限り提供を求めます。

・加害者からのヒアリング
加害者とされる従業員等との関係では、後に紛争となったときのために、同人をヒアリングする際に、本人の弁明内容を聴き取って、その要旨をその場で文書化し、本人がその内容を確認した上で、署名押印をした書面を作成しておくことが望ましいといえます。

本人が署名押印した書面の作成が難しい場合には、録音でも構いません。その他の方法としては、会社が議事録という形で残しておく方法も考えられます。

書面の作成や録音には、セクハラ行為の具体的態様のほか、「意に反して」行われた点について記載ないし残すよう留意します。これを記載等しておくことで、後に相手方の合意があったのだからセクハラ行為ではない、処分が重すぎるなどと争われた場合に、会社側の処分の妥当性を基礎付ける資料の一つとなります。

・関係者・目撃者からのヒアリング

被害者と加害者の言い分は、食い違うことも多いため、申告のあった被害の場に、他の従業員などの第三者がいた場合には、これらの目撃者からからのヒアリングも実施し、事実関係の把握に努めます。

この場合にも、書面の作成などをしておくべきことは上記のとおりです。

(2)適切かつ慎重な処分

ヒアリングや客観的な資料から、セクハラ行為の事実が認められた場合には、懲戒処分等の処分・対応を検討します。この際、具体的事案に応じて適切な処分を行うように十分配慮しなければなりません。

・配転命令
セクハラ行為を行った加害者を配転させることにより、被害者がその後同様の被害にあわないようにすることが考えられます。
もっとも、配転命令は、職種又は勤務場所を限定する合意がある際には、当該従業員の同意を得ずにこの変更を行うことはできませんので注意が必要です。
また、業務上の必要性がないのに配転命令を行ったなど、権利の濫用や信義則違反にあたる場合には配転命令は無効となります。セクハラ行為の程度が微々たるものである場合の配転命令や不必要な遠隔地への配転命令は無効と判断されるおそれがありますので注意が必要です。

・懲戒処分

懲戒処分を行う場合には、セクハラ行為について就業規則にどのような種類の懲戒処分が定められているか、また、セクハラ行為の態様・悪質性・程度に鑑みてどの処分に該当するのかを慎重に検討する必要があります。

処分内容を検討するにあたっては、暴力や脅迫を伴ったものか否か、身体接触の有無とその態様、頻度・期間、上司・部下等の関係性などが一定の要素となりますが、判断に迷うケースも多いと思われます。

後に紛争が起こらないようにするためにも、弁護士等の専門家に相談し、具体的な事情を説明の上、どの処分が適切なのか確認することが望ましいといえます。

2 セクハラ問題に対する事前措置

男女雇用機会均等法第11条では、職場においてセクハラ行為を防止するため、雇用管理上必要な配慮をすることが義務づけられています。

(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)

第十一条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(以下省略)具体的には、以下のような対応が考えられます。

・就業規則、パンフレット、広報などでセクハラに関する方針を記載し、セクハラについて会社の方針を明確化し、社内に周知させる。

・従業員に対して研修を義務づけ、どのような行為がセクハラにあたるのか、また、これにより被害者はどのような思いをするのかなど、セクハラに関する知識を身につけさせる。

・外部の相談員の配置や匿名での相談が可能な相談・苦情窓口を設け、相談しやすい体制を整える

・事実関係の迅速かつ正確な把握のため、事前のマニュアル作成などにより早急に対応が図れるようにしておく

3 より良い適切な解決のために

以上のとおり、企業は日頃からセクハラを予防する措置をとるとともに、セクハラに関する申告があった場合には、迅速かつ適切に対処することが求められています。

被害の申告があったにもかかわらず、これを放置した場合には、被害者が、加害者だけでなく会社を相手として損害賠償請求訴訟を提起することも考えられます。このような場合には、損害賠償という法的なリスクを負うほか、会社の怠慢な対応が明るみに出て、内外ともに会社の信用を失うということになるおそれも十分に考えられます。

より良い適切な解決のためには、「どのようにヒアリングを進めたらよいのか」、「セクハラ行為にあたるのか」、「どのような対処をすべきか」などの判断が難しいと感じた際には、速やかに弁護士に相談し、具体的な事案に即して得られた助言を参考に対処することが最善の方法であるといえます。

後で取り返しのつかないことにならないためにも、早めに弁護士にご相談されることをお薦めいたします。

<不適切な対応例>

1.従業員Aが、上司Bからセクハラにあったと法務部などの管轄部署に相談してきたが、会社としてはセクハラ行為に当たるほどのものではないであろうと考え、その

まま放置していた
  ▼
AがB及び会社に対し、セクハラにあったことの慰謝料を含む損害賠償訴訟を請求する訴訟を提起したところ、長く続いた裁判の末、Bと連帯して会社に対しても、何ら適切な措置を取らなかったことを理由に、損害賠償を命じる旨の判決が下された。

2.セクハラ行為を受けたとの従業員Cの申告に基づき、入念な社内調査をすることなく、セクハラ行為をしたとされる別の従業員Dを即時解雇した。
  ▼
従業員Dが、セクハラ行為など行っていないのに不当に解雇されたとして、解雇無効を前提とする従業員としての地位確認及び給与(バックペイ)の支払を求めて訴訟提起した。
解雇から2年近くも経った後にDの言い分を認める判決が下され、Dに2年分近い給与を支払わねばならないこととなった。
更に、会社の対応に問題があったことが明らかになったことで、Cも会社に対して不信感をもつようになり、社内全体の雰囲気も悪化した。

このような事態を避けるために、弁護士への相談をお勧めします。

<当事務所による解決例>

詳しい事情を伺った上で、各事案に合わせて
①まず当該行為がセクハラ行為にあたるか
②セクハラ行為があったとすれば、加害者に対しどのような処分が適切か
③セクハラ行為でなかったとすれば、その後被害者にはどのように対応すべきか
等を法的観点よりアドバイスします。
  ▼
セクハラ行為を申告した被害者又はセクハラ行為をしたとして処分を受けた加害者が、会社の対応を不当なものだとして争ってきた場合には、貴社の代理人となって交渉にあたります。
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話合いでの解決がまとまらず、労働審判の申立てや訴訟提起を受けた場合には、事情をよく把握している当事務所の弁護士が、貴社の代理人として、貴社の対処が適切であったことを主張して訴訟対応をし、貴社の受ける不利益が少なくなるよう最大限努力します。

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顧問弁護士が継続的に企業経営に関する法的なサポートをさせていただくことで、より効果的に法的トラブルを防止し、迅速かつ的確な問題解決を図ることが可能となります。
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