パタニティ・ハラスメント対策

パタニティ・ハラスメント対策

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パタニティ・ハラスメント(パタハラ)対策

企業における男性従業員の育児休業取得について

1.パタハラとは?

パタハラとは、マタニティ・ハラスメントの略語であるマタハラの父性版で、「パタニティ(Paternity:父性)・ハラスメント」の略語であり、男性従業員の育児休業制度取得等に関しての上司や同僚らからのいやがらせや圧力等の行為をいいます。

具体的にパタハラと言われる行為には、以下のような周囲の発言や人事などが該当します。
・男性従業員の育児休業の申請を認めない
・男性従業員の育児休業の申請に対し、「他の従業員に迷惑が掛かってしまうと思わないか?」などという発言をする
・育児休業明けの男性従業員に対し、配置転換、異動、降格などを行う  など

2.パタハラが起こる背景 

パタハラ問題が挙げられる要因の一つに、「育児は女性が行うものであり、男性は子供が産まれても休まず仕事をすべきである」という今の時代にそぐわない意識的又は無意識的な偏見(アンコンシャス・バイアス)の根強い存在があります。

企業側としては、男性従業員に育児休暇を取得しやすい環境を整えたいという意識は持っていても、育児休暇中のポストをどのように埋めるかなどの現実的課題に直面し、そこにこうした偏見が作用してパタハラにつながってしまっているものと考えられます。

3.パタハラに関する法的規制

(1)育児介護休業法10条と指針

育児介護休業法10条は、「事業主は、労働者が育児休業申出等(育児休業申出及び出生時育児休業申出をいう。以下同じ。)をし、若しくは育児休業をしたこと・・・を理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」と定め、育児休業に関する不利益取り扱いを禁止しています。

またここでいう「解雇その他不利益な取り扱い」について、厚生労働省は、事業主が講ずべき措置についての指針を策定しています(平成21年厚生労働省告示第509号、以下「指針」)。

指針は、「解雇その他不利益な取り扱い」とは、「労働者が育児休業等の申出等をしたこととの間に因果関係がある行為」であるとし、その例として、「不利益な配置の変更を行うこと」、「就業環境を害すること」等をあげています。

※指針:
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/3_0701-1s_1.pdf

(2)「不利益な配置の変更」とは

指針は、配置の変更が「不利益な取扱い」に該当するか否かは、配置の変更前後の賃金その他の労働条件、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について総合的に比較考量の上、判断すべきものとしています。

そして、例えば、通常の人事異動のルールからは十分に説明できない職務または就業の変更を行うことにより、当該労働者に相当程度経済的または精神的な不利益を生じされることは、「不利益な配置の変更を行うこと」に該当するとしています。

また、所定労働時間の短縮措置の適用について、当該措置の対象となる業務に従事する労働者を、当該措置の適用を受けることの申出をした日から適用終了予定日までの間に、労使協定により当該措置を講じないものとしている業務に転換させることは、「不利益な配置の変更を行うこと」に該当する可能性が高いものとしています。

(3)「就業環境を害すること」とは

指針は、業務に従事させない、専ら雑務に従事させる等の行為は、「就業環境を害する行為」に該当するものとしています。

(4)令和3年改正法

出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにすることを目的として、次の要点で育児介護休業法が令和3年6月に改正され、令和4年4月から段階的に施行されました。

mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

① 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設 【令和4年10月1日施行】

② 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け 【令和4年4月1日施行】

③ 育児休業の分割取得 【令和4年10月1日施行】

④ 育児休業の取得の状況の公表の義務付け 【令和5年4月1日施行】

⑤ 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和 【令和4年4月1日施行】

4.企業のパタハラ対策

(1)指針の要件の該当性を慎重に判断する

前述の厚生労働省は育児介護休業法10条及び指針に基づき、男性従業員が育児休業を申し出又は休業を取得した際の企業側の対応が、不利益取り扱い又は就業環境を害することに該当しないかを慎重に判断することが重要です。これは専門的判断にも属しますから、弁護士に相談しつつ判断していくことが妥当だと考えます。

(2)社内で男性の育児休業についてコミュニケーションの機会を設ける

育児休業を取得する従業員と経営者や人事などの部門が、復帰後の考えを共有することも、トラブル発生を防止する一つの方法でしょう。

また育児休業取得を希望する従業員に対しては、復帰後の配属先など従業員が不満を感じないように、育休明けの配置や処遇についての選択肢を予め伝え、本人の理解を得た上で育児休業期間に入ることで問題化を防ぐこともできるでしょう。

同時に、当該従業員の同僚や上司とも十分にコミュニケーションを取ることにより、ハラスメントが生じやすい環境にならないようにしていくことが重要です。

(3)育児休業制度を明示する

育児休業制度をしっかり構築し、従業員に十分周知することも、パタハラ対策として大切です。社内規定として、育休制度について組織としてどう扱っているか、従業員によく説明して会社の姿勢を共有しましょう。

男性の育児休業取得の権利が女性と同様にあることも改めて示し、従業員の理解を得ることで、周囲からのネガティブな反応を減らすことにも繋がります。

制度についてご不安やご不明点があれば、是非、弁護士に相談ください。

(4)イクメンアワード等への参加

厚生労働省が呼び掛けている「イクメンプロジェクト」へ参加するのも対策として期待できます。

男性の育児と仕事の両立を積極的に推進する企業や上司を表彰するプロジェクトに参加することにより、社内の男性の育児参加への意識を高め、さらには社外の評価を得ることにつながると考えられます。

パタハラ問題というのは、未だに周りの理解が十分でないこともあり、問題化したときの対応に不安を感じられる経営者の方もおられると思います。

法的観点からの育児休業取得に関する制度の整備・リーガルチェックや実際に問題が起きそうな状況、起きてしまったときの対応等、弁護士が力になれる場面は多々ありますので、是非お気軽にご相談ください。

お困りの方は湊総合法律事務所までご相談ください。

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