いじめ・体罰についての法律問題
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いじめ・体罰についての法律問題
最近、いじめ問題や教職員の体罰問題をはじめ、学校法人や教育機関をめぐる法律問題が後を絶ちません。
いじめ問題について言えば、平成23年、滋賀県大津市において、いじめを苦にした生徒が自殺してしまうという事件が発生したことは、まだ皆様の御記憶に新しいことと思います。
また、体罰問題について言いますと、数年前に大阪市の高等学校で、体育部の監督がキャプテンに対して体罰を加えた結果、そのキャプテン が自殺してしまったという痛ましい事案が発生しました。この事案は、高等の入試取りやめという事態にまで至ったことで、皆様もよくよくご存じのことでしょ う。
いじめに対する学校の対応
いじめは、強い立場の生徒が、弱い立場の生徒に一方的に、しかも時には集団で危害を加えるもので、それ自体がとても卑劣なものですし、その結果として児童生徒の自殺にまで至ってしまうこともあるわけですから、本当に重大な問題です。
それでは、いじめをする児童生徒を扱う学校や教育機関の教職員には、法律上、どのような対応が認められているのでしょうか。
懲戒の問題点
まず、学校教育法11条では、教職員が児童生徒に対して、教育上必要な限度で「懲戒」を加えることが認められています。
ただ、「懲戒」が 限度を超えてしまうと「体罰」になってしまいます。「体罰」は学校教育法11条で絶対的に禁止されています。ですから、現場の教職員には、「体罰」に至ら ない「懲戒」の限度での対処までが法律上認められているということになります。
体罰に対する学校の対応
「懲戒」であれば許されるけれども、「体罰」にまで至ってしまうと禁止されるということになりますと、どこまでが「懲戒」で、どこからが「体罰」になるのか、その線引きや見極めが非常に大切になります。
「体罰」は法律上、いかなる理由によるのであれ絶対的に禁止されており、「体罰」を加えた 結果、相手方の児童生徒を負傷させてしまうと、国公立学校であれば、国家賠償法によって国や地方公共団体が損害賠償責任を負う可能性がありますし、私立学 校であれば、民法の不法行為(709条・715条)によって、負傷させた教職員やその使用者である学校法人・教育機関が損害賠償責任を負う可能性があります。
懲戒と体罰の区別
では、「懲戒」と「体罰」はどのように区別されるのでしょうか。
「懲戒」と「体罰」の区別については、文部科学省が平成19年2月5日付けで「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」と いう通知を発出しており、その別紙として、「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方」というものがあります。これによります と、「教員等が児童生徒に対して行った懲戒の行為が体罰に当たるかどうかは、当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時 間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する」とされています。
懲戒と体罰の基準
いろいろな事情を総合考慮して判断するということですと、判断基準としてはかなり曖昧で、その場で即座に判断して行動しなければならない教職員にとっては、行動の基準として不十分な気がします。
この通知はもう少し具体的に「懲戒」と「体罰」の区別基準のようなものを示しています。
それによりますと、「懲戒」として行われた行為が肉体的苦痛を与えるものかどうかが最重視されており、二次的な基準として有形力を行使するもか否かが考慮されているようです。
すなわち、有形力を行使するもののうち、肉体的苦痛を与えるものは「体罰」に該当するので許されない。有形力を行使するもののうち肉体的苦痛を与えないものについては許容される可能性があるということです。
また、有形力を行使しないものであっても、肉体的苦痛を与えるものについては、「体罰」に当たると解されています。
例えば、放課後等に教室に残留させて、用便のためにも教室外へ出ることを許さないとか、食事の時間を過ぎても長く留め置くものは肉体的苦痛を与えるため 「体罰」に当たるとされていますが、授業中、教室内に起立させるとか、学習課題や清掃活動を課す、学校当番を多く割り当てる、立ち歩きの多い児童生徒を叱って着席させるといったものは、「体罰」に当たらず許されると解されています。
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