ステークホルダーとの開示・対話

ステークホルダーとの開示・対話

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ステークホルダーとの開示・対話

1 不十分な開示・対話の欠如は致命的リスクに

以上述べてきたように、企業がその企業価値を向上させていくためには、SDGsの目標からチャンス(機会)とリスクを分析・抽出し、抽出されたチャンス(機会)を実現するとともに、リスクを管理・除去・解決すること、及びそれを実行するガバナンス体制を構築することが必要不可欠です。

しかし、それだけでは絵に描いた餅に過ぎません。なぜなら、それでは株主、消費者、取引先、市民団体、NGOといったステークホルダーからはまったく取り組みの内容が見えてこないからです。

いくらESG・SDGs経営をしていても、ステークホルダー・投資家やNGOから理解されなければ、ゼロに等しいことになり、結局はリスクにさらされることになってしまいます。

ですから企業は、企業価値向上プロセスを適時に適切に開示し、ステークホルダーと対話をして不断の改善を試みなければならないのです。

2 共通言語の必要性

しかし、企業も、ステークホルダーである機関投資家、株主、消費者、取引先、市民団体、NGOも、関心のありどころは様々で、ある程度、共通化し共通言語化しておかないと、適切な対話を行うことができません。

そこで、いくつかのツールが策定されています。

すなわち、機関投資家向けに作られているもとして「スチュワードシップコード」、上場会社向けに作られているものとして「コーポレートガバナンスコード」、「日弁連ESGガイダンス」などがあり、機関投資家と企業との橋渡しをするものとして「価値協創ガイダンス」などがあります。

そして、これらのどれもが、企業の持続可能性・成長性やESGの観点が非常に重視されるようになってきています。

以下、順次説明しましょう。

3 価値協創ガイダンス

(1)概要

経産省は2017年5月に「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス」を発表しました。これは企業と投資家を繋ぐ共通言語として、対話や情報開示のあり方の拠り所となる枠組み示したものです。

すなわち、企業経営者にとってみれば、企業経営者が自らの経営理念やビジネスモデル、戦略、ガバナンス等を統合的に投資家に伝えるための手引きとして役立つものであり、投資家にとってみれば、投資家が、中長期的な観点から企業を評価し、投資判断やスチュワードシップ活動に役立てるための手引きとして役立つものとなっています。

(経産省:価値協創ガイダンスより抜粋)

(2)持続可能性・ESG要素の具体例

■ 「持続可能性・成長性」

05.特に機関投資家にとっては、顧客・受益者に対するスチュワードシップ責任を果たす観点からも、企業のリ スク・収益機会、あるいは企業価値を毀損するおそれのある事項を把握することが求められており、例え ば、ESG の要素がこれらとどのように関連し、影響を与えるのかを理解することは重要である。」

■ 3-1 ESGの認識

  1. ESG の概念・範囲には様々な考え方がるが、多くの 投資家は少なくとも中長期的なリスク要因として認識している。
  2. したがって、企業は自社の中長期的な企業価値やビジネスモデルの持続性に影響を与える、あるいは事 業の存続そのものに対するリスクとして、どのような ESG の社会・環境要素を特定しているか、その影響を どのように認識しているかを示すべきである。

 

4 日弁連ESGガイダンス

(1)概要

日弁連は、2018年8月、「ESG(環境・社会・ガバナンス)関連リスク対応におけるガイダンス(手引)~企業・投資家・金融機関の協働・対話に向けて~」を発表しました。

本ガイダンスでは、ESG関連リスクへの対応のための体制整備の方法、非財務情報の開示項目の例、開示の方法・媒体に関する実務的指針を提供しています。

【日弁連 ESG関連リスク対応におけるガイダンス(手引き)】

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2018/opinion_180823.pdf

5 コーポレート・ガバナンスコード(CGコード)

(1)概要

コーポレート・ガバナンスコードとは、上場企業が行う企業統治においてガイドラインとして参照すべき原則・指針のことをいいます。

金融庁は、2015年3月にCGスコードを発表し、東京証券取引所は、同年6月から適用開始しました。

73原則、すなわち、5つの基本原則。付随する30原則。38の補充原則からなっており、コンプライ・オア・エクスプレインの原則のもと、東証1部・2部の上場企業は、73原則を実施しない場合には、CGコード報告書に、その理由を説明しなければならないものとされています。

(2) 持続可能性・ESG要素の具体例

■ 原則2-3.

上場会社は、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティー(持続可能性)を 巡る課題について、適切な対応を行うべきである。

■ 補充原則

 2-3① 取締役会は、サステナビリティー(持続可能性)を巡る課題への対応は重要 なリスク管理の一部であると認識し、適確に対処するとともに、近時、こうし た課題に対する要請・関心が大きく高まりつつあることを勘案し、これらの課 題に積極的・能動的に取り組むよう検討すべきである。

■ 【適切な情報開示と透明性の確保】

 3. 上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・ 経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。 その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非 財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性 の高いものとなるようにすべきである。

■ 考え方

更に、我が国の上場会社による情報開示は、計表等については、様式・作成要領な どが詳細に定められており比較可能性に優れている一方で、会社の財政状態、経営戦 略、リスク、ガバナンスや社会・環境問題に関する事項(いわゆるESG要素)など について説明等を行ういわゆる非財務情報を巡っては、ひな型的な記述や具体性を欠 く記述となっており付加価値に乏しい場合が少なくない、との指摘もある。取締役会 は、こうした情報を含め、開示・提供される情報が可能な限り利用者にとって有益な 記載となるよう積極的に関与を行う必要がある。

【東証ガバナンスコード(変更点版)】

https://www.jpx.co.jp/news/1020/nlsgeu000000xbfx-att/20180602.p

6 スチュワードシップコード

(1)概要

スチュワードシップコードとは、コーポレートガバナンスの向上を目的とした機関投資家の行動規範のことです。

金融庁は、2014年2月、機関投資家が責任ある投資を行うための7原則としてスチュワードシップコードを発表しました。

2020年3月24日に改定され、新しいコードでは、サスティナビリティが強く打ち出されることになりました。

本コードにおいて、「スチュワードシップ責任」とは、機関投資家が、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解のほか運用戦略に応じたサステナビリティ(ESG 要素を含む中長期的な持続可能性)の考慮に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、「顧客・受益者」(最終受益者を含む。以下同じ。)の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任を意味しています。

(2)持続可能性・ESG要素の具体例

■ 原則1

 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定 し、これを公表すべきである。

■ 指針 1-1.

 機関投資家は、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解のほか運用戦 略に応じたサステナビリティ(ESG 要素を含む中長期的な持続可能性)の考 慮に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上やその持続的成長を促すことにより、顧客・受益者 の中長期的な投資リターンの拡大を図るべきである。

■ 原則4

 機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。

■ 指針

4-2. 機関投資家は、サステナビリティを巡る課題に関する対話に当たっては、運用戦略と整合的で、中長期的な企業価値の向上や企業の持続的成長に結び付く ものとなるよう意識すべきである。

【責任ある機関投資家の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード】

https://www.fsa.go.jp/news/r1/singi/20200324/01.pdf

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