企業経営におけるSDGsへの取り組み

企業経営におけるSDGsへの取り組み

タイトル

企業経営におけるSDGsへの取り組み

1 SDGsについて

 SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略です。

 これは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月25日第70回国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標を意味します。

 17のゴール・169のターゲットから構成され、各目標の達成度を測るための232の指標(KPI)を特定しています。

【SDGsの5つの特徴】

①     普遍性 先進国を含め、すべての国が行動

②     包摂性 人間の安全保障の理念を反映し、「誰一人取り残さない」

③     参画性 全てのステークホルダーが役割を

④     統合性 社会、経済、環境に統合的に取り組む

⑤     透明性 定期的にフォローアップ

 

2 SDGsを理解する上で最も大切なこと

 SDGsは、ロゴが素敵で何となくロゴを見ると内容が理解できることから、それ以上に内容を精査しないという人が案外多いようです。しかし、これではSDGsの内容を理解したことには決してなりません。

 まずは、第70回国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」をしっかり味わって読み込んで、SDGsが何を目的として何を目指しているのかをしっかり把握することが大事です。ここではすべてを紹介することはできませんが、最低限のものとしてアジェンダの「前文」、「我々のビジョン」及び「今日の世界(直面する課題)」をご紹介します(いずれも外務省仮訳から抜粋させて頂きました。)。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf

 読んでみると、随分とイメージが変わってくると思います。

つまり、SDGsは日本語訳をすると「開発目標」となっていて、経済開発の目標ではないかと誤解されることがあるのですが、実際はそうではありません。あくまでも貧困撲滅、女性や女児の人権確立がメインの目的として誰一人として取り残さないことに主眼が置かれています。国連憲章に謳われているように基本的人権の保障ないし実現が第一にあり、そのことと経済社会の発達をいかに調和的に進めるかが問われているのです。

企業経営においては、このことに気が付くことがとても大切であり、今後の経営の方向性に大きく活きてきます。まずは以下を熟読玩味してみてください。

(1) 2030アジェンダ「前文」

 「このアジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画である。これはまた、より大きな自由における普遍的な平和の強化を追求するものでもある。我々は、極端な貧困を含む、あらゆる形態と側面の貧困を撲滅することが最大の地球規模の課題であり、持続可能な開発のための不可欠な必要条件であると認識する。・・・・・

 今日我々が発表する17の持続可能な開発のための目標(SDGs)と、169のターゲットは、この新しく普遍的なアジェンダの規模と野心を示している。・・・・・

 これらは、すべての人々の人権を実現し、ジェンダーの平等とすべての女性と女児の能力強化を達成することを目指す。これらの目標及びターゲットは、統合され不可分のものであり、持続可能な開発の三側面、すなわち経済、社会及び環境の三側面を調和させるものである。

(2)  2030アジェンダ「我々のビジョン7(目指すべき世界像)」

「これらの目標とターゲットにおいて、我々は最高に野心的かつ変革的なビジョンを設定している。我々は、すべての人生が栄える、貧困、飢餓、病気及び欠乏から自由な世界を思い描く。我々は、恐怖と暴力から自由な世界を思い描く。すべての人が読み書きできる世界。すべてのレベルにおいて質の高い教育、保健医療及び社会保護に公平かつ普遍的にアクセスできる世界、身体的、精神的、社会的福祉が保障される世界、安全な飲料水と衛生に関する人権を再確認し、衛生状態が改善している世界。十分で、安全で購入可能、また、栄養のある食糧がある世界。住居が安全、強靭(レジリエント)かつ持続可能である世界。そして安価な、信頼でき、持続可能なエネルギーに誰もがアクセスできる世界。」

(3)  2030アジェンダ「我々のビジョン8(目指すべき世界像)」

我々は、人権、人の尊厳、法の支配、正義、平等及び差別のないことに対して普遍的な尊重がなされる世界を思い描く。人種、民族及び文化的多様性に対して尊重がなされる世界。人間の潜在力を完全に実現し、繁栄を共有することに資することができる平等な機会が与えられている世界。子供たちに投資し、すべての子供が暴力及び搾取から解放される世界。すべての女性と女児が完全なジェンダー平等を享受し、その能力強化を阻む法的、社会的、経済的な障害が取り除かれる世界。そして、最も脆弱な人々のニーズが満たされる、公正で、衡平で、寛容で、開かれており、社会的に包摂的な世界。」

(4)  2030アジェンダ「我々のビジョン9(目指すべき世界像)」

「我々は、すべての国が持続的で、包摂的で、持続可能な経済成長と働きがいのある人間らしい仕事を享受できる世界を思い描く。消費と生産パターン、そして空気、土地、河川、湖、帯水層、海洋といったすべての天然資源の利用が持続可能である世界。民主主義、グッド・ガバナンス、法の支配、そしてまたそれらを可能にする国内・国際環境が、持続的で包摂的な経済成長、社会開発、環境保護及び貧困・飢餓撲滅を含めた、持続可能な開発にとってきわめて重要である世界。技術開発とその応用が気候変動に配慮しており、生物多様性を尊重し、強靭(レジリエント)なものである世界。人類が自然と調和し、野生動植物その他の種が保護される世界。」

(5)  2030アジェンダ「今日の世界(直面する課題)」

「我々は、持続可能な開発に対する大きな課題に直面している。依然として数十億人の人々が貧困のうちに生活し、尊厳のある生活を送れずにいる。国内的、国際的な不平等は増加している。機会、富及び権力の不均衡は甚だしい。ジェンダー平等は依然として鍵となる課題である。失業、とりわけ若年層の失業は主たる懸念である。地球規模の健康の脅威、より頻繁かつ甚大な自然災害、悪化する紛争、暴力過激主義、テロリズムと関連する人道危機及び人々の強制的な移動は、過去数十年の開発の進展の多くを後戻りさせる恐れがある。天然資源の減少並びに、砂漠化、干ばつ、土壌悪化、淡水の欠乏及び生物多様性の喪失を含む環境の悪化による影響は、人類が直面する課題を増加し、悪化させる。我々の時代において、気候変動は最大の課題の一つであり、すべての国の持続可能な開発を達成するための能力に悪影響を及ぼす。世界的な気温の上昇、海面上昇、海洋の酸性化及びその他の気候変動の結果は、多くの後発開発途上国、小島嶼開発途上国を含む沿岸地帯及び低地帯の国々に深刻な影響を与えている。多くの国の存続と地球の生物維持システムが存続の危機に瀕している。」

3 17の目標・169のターゲット・232の指標を理解する

(1) SDGsの17の目標

 SDGsの目標は17あります。

【SDGsの17目標】

  1. 1.貧困をなくす
  2. 2.飢餓をゼロに
  3. 3.すべての人に健康と福祉を
  4. 4.質の高い教育をみんなに
  5. 5.ジェンダー平等を実現しよう
  6. 6.安全な水とトイレを世界中に
  7. 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  8. 8.働きがいも経済成長も
  9. 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
  10. 10.人や国の不平等をなくそう
  11. 11.住み続けられるまちづくりを
  12. 12.つくる責任つかう責任
  13. 13.気候変動に具体的な対策を
  14. 14.海の豊かさを守ろう
  15. 15.陸の豊かさも守ろう
  16. 16.平和と公正をすべての人に
  17. 17.パートナーシップで目標を達成しよう

(2) 169のターゲットと232の指標

 この17の目標を見ただけでは、具体的な内容まではよく理解することができません。2030アジェンダに記載されている169のターゲットと232の指標をしっかりと検討することが重要です。

 これについては、国連統計部に掲載されているものを総務省が仮訳したものが、ターゲットと指標を対比させていてわかりやすいので、ここにご紹介いたします。是非参考にされてください。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000562264.pdf

4 日本政府のSDGsの取り組み

 日本政府も2015年5月にSDGs推進本部を設置し、SDGsを強力に推し進めてきています。

 政府が策定しているSDGs実施指針は「今後の2030アジェンダの実施に際して、先進的な取組を行っている民間企業等のグッド・プラクティスの共有や表彰等による奨励策の検討を進め、民間企業との更なる連携の強化を図り、さらに、民間企業がイノベーションを生み出すための支援や環境整備に取り組む」とし、さらに、「ビジネスと人権の観点に基づく取組やESG投資、社会貢献等の民間セクターにおける持続可能性に配慮した取組は、環境・社会・ガバナンス・人権といった分野での公的課題の解決に民間セクターが積極的に関与する上で重要であるのみならず、こうした分野での取組を重視しつつあるグローバルな投資家の評価基準に対し、日本企業が遅れをとらずに国際的な市場における地位を維持するためにも極めて重要である。このための環境づくりに向けた政府の施策を進めるとともに、民間企業の取組を後押しする。」としています。

企業経営を遂行するに際しては、日本政府の動向もしっかり理解しておく必要があります。

日本政府が発行している下記の資料には目を通しておくことは必須です。

【SDGs推進本部作成の「SDGsアクションプラン2020」】

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/dai8/actionplan2020.pdf

【持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための具体的施策(付表)

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/pdf/jisshishishin_fuhyo.pdf

【「SDGs実施指針(令和元年12月20日版)」】

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/pdf/jisshi_shishin_r011220.pdf

5 経団連のSDGsの取り組み

(1) 経団連は、2017年11月に「企業行動憲章」を改定し、そのサブタイトルも「~Society5.0の実現を通じたSDGs(持続可能な開発目標)の達成~」とし、以下に紹介する前文の中でも経団連がSDGsの達成を柱として企業行動憲章を改定する旨を高らかに宣言しています。また、第4原則では人権尊重する経営を行うよう要求し、第10原則ではガバナンス経営を求め、さらには、自社だけではなくサプライチェーンに対しても企業行動憲章の精神に基づく行動を促すことを要求しています。

■企業行動憲章「前文」

「国際社会では、「ビジネスと人権に関する指導原則」(2011年)や「パリ協定」(2015年)が採択され、企業にも社会の一員として社会的課題の解決に向けて積極的に取り組むよう促している。

また、2015年に国連で、持続可能な社会の実現に向けた国際統一目標である「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択され、その達成に向けて民間セクターの創造性とイノベーションの発揮が求められている。

 そこで、今般、経団連では、Society5.0の実現を通じたSDGsの達成を柱として企業行動憲章を改定する。

 会員企業は、持続可能な社会の実現が企業の発展の基盤であることを認識し、広く社会に有用で新たな付加価値及び雇用の創造、ESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮した経営の推進により、社会的責任への取組を進める。

 また、自社のみならず、グループ企業、サプライチェーンに対しても行動変革を促すとともに、多様な組織との協働を通じて、Society5.0の実現、SDGsの達成に向けて行動する。」

■ 第4原則

「すべての人々の人権を尊重する経営を行う。」

■ 第10原則

「経営トップは、本憲章の精神の実現が自らの役割であることを認識して経営にあたり、実効あるガバナンスを構築して社内、グループ企業に周知徹底を図る。あわせてサプライチェーンにも本憲章の精神に基づく行動を促す。また、本憲章の精神に反し社会からの信頼を失うような事態が発生した時には、経営トップが率先して問題解決、原因究明、再発防止等に努め、その責任を果たす。」

(2) 「企業行動憲章」の評価

 改定された企業行動憲章は、ESG・SDGs・指導原則の流れを非常によく検討して作成されており、大いに参考になります。ぜひ、憲章とともに発行されている手引きも熟読いただき経営に役立てて頂きたいと思います。

【経団連 企業行動憲章】

http://www.keidanren.or.jp/policy/cgcb/charter2017.html

【経団連 企業行動憲章 実行の手引き】

https://www.keidanren.or.jp/policy/cgcb/tebiki7.pdf

6 企業経営においてSDGsに取り組むには

(1) 企業経営においてSDGsに取り組むポイント

①    SDGsの目標からチャンス(機会)とリスクを分析・抽出する

②    SDGsの目標から導かれるチャンス(機会)を実現する

③    SDGs(ESG)の負の状況と影響(リスク)を管理・除去・解決する

④    ①~③を実行するガバナンス体制を構築する

⑤    ①~④による企業価値向上プロセスを開示し、NGO・市民団体・株主と対話する。

 

 以上の各過程ととおして、投資先企業やNGOからの信頼が向上し、投資や企業価値向上に繋がっていくことになります。

 ここでは、①から②について説明します。③以降は後述します。

(2) SDGsが生み出す市場規模

 国連開発計画(UNDP)によると、SDGsの目標を達成するためには、世界で年間5~7兆ドルが必要であり、投資機会は途上国で1~2兆ドル、先進国でも1.2兆ドルが必要と試算されています。

 また、SDGsが達成されるなら、労働生産性の向上や環境負荷の低減等を通じた外部経済効果を考慮すると、2030年までに新たに年間12兆ドルの市場機会が生まれるともいわれています。

 各企業としては、SDGsが大きなビジネスチャンスでもあることに注目して、積極的に取り組む価値があるといえます。

(3) 「既存の取組へのラベル貼り」ではダメ

 SDGsに係る企業の取組については、「既存の取組にSDGsの各ゴールの ラベルを貼るにとどまっている」との批判されることがあります。

 どうすればSDGsにビジネスチャンスを見出して、本業の中に取り込めるのか、企業によるビジネス・本業 とSDGsや社会課題解決の関係はどうあるべきかを十分に検討していくことが大切です。

(4) CSV「共通価値の創造」の発想を持つ

 CSV(Creating Shared Value)(共通価値の創造)とは、企業と社会の双方に価値を生み出す経営戦略であり、2011年にハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授によって提唱されたもので、社会的課題の解決と経済価値の同時実現を目指すものです。

 ポーター教授は、社会課題解決型の経営戦略を描く「ネスレ」からヒント得ています。ネスレは、ベースにサスティナビリティを置き、重要課題を抽出して(人間・コミュニティ・地球の3つ)、社会課題にも対処しつつ経済価値も目指す共通価値の創造戦略を示していました。

 SDGsに取り組む場合には、ポーター教授が提唱するように社会的課題の解決と経済価値の同時実現を目指していくという発想を持つことが大切です。

(5) 重要課題(マテリ アリティ)を特定して集中する

 SDGsは、各プレイヤーに17の目標、169のターゲット全てに焦点を当てることを求めているわけではありません。

 自社にとっての重要課題(マテリアリティ)を特定し、関連の深い目標を見定めていくことが大切です。こうすることにより、自社の資源を重点的に投入することができ、結果として、自社の本業に即した、効率的なSDGsへの貢献が可能となっていきます。

(6) SDG Compassを検討する

 国連は、「SDG Compass-SDGsの企業行動指針」を策定し、各企業にSDGsを推進する行動を起こすよう求めています。

 これは各企業の事業にSDGsがもたらす影響を解説するとともに、持続可能性を企業の戦略の中心に据えるためのツールと知識を提供するものです。

 優先課題の決定⇒目標設定⇒経営統合⇒報告とコミュニケーションの各過程において行うべきことが記載されおり大変参考になります。是非ご活用ください。

【SDG Conpass】

https://sdgcompass.org/wp-content/uploads/2016/04/SDG_Compass_Japanese.pdf

7 ESG投資とSDGsの関係

 ESGは、投資の場面において、どういう企業に投資すれば、中長期的な利益を得られるか、企業は何にポイントを置けば中長期的に投資を受けられるかという、あくまでも投資とリターンを問題とする概念です。

 これに対して、SDGsは、ESGと表裏をなすものとして、ESG課題を具体的に示し、企業が何に取り組めば企業価値の持続的向上に資するのか、その指標を示す意義を有するものといえます。

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