認知症が招く法的トラブル 第3回

~認知症の親の財産管理をするときの法的重要ポイントとは?~

1 はじめに

前回までは、認知症に罹患した父親が高額の布団を買ってしまったケース、認知症の親の財産を善意または悪意で使ったケースの法律問題についてご紹介しました。

今回は、これらのケースの対策について考えていきましょう。

 

2 認知症の親の財産の管理をするには?

(1)善意で財産管理をしていたのに・・・

前回、認知症の親の財産を、子供がその親のために一生懸命管理して、親のために支出をしていたのに、親が亡くなって相続の場面になると、他の兄弟姉妹から親の財産を管理していたことを良いことに、財産を使い込んだのではないかと、あらぬ疑いをかけられて紛争になることがよくあるということをお話ししました。

では、このような事態にならないようにするためにはどうしたら良いのでしょうか?

(2)記録をつけ、証拠を残す

このような事態に陥ってしまった第1の原因は、親の財産を管理する際に、親の財産を、いつ、何に、いくらを支出したのか、ということがきちんと記録に残されていなかったこと、そして、その際に領収書等を取得して、証拠として保管されていなかったことにあります。

このような記録と証拠さえあれば、相続になったとしても、着服などせずに、親のために支出したのだということが証明でき、紛争にならなくて済んだのです。

このような記録も証拠もなければ、親が亡くなった後になってから、いくら親のために使ったと主張しても、他の兄弟姉妹からは疑いの目で見られても仕方ありません。きちんと記録と証拠を残していきましょう。

(3)財産管理権限を取得する

上述のような紛争になってしまう第2の原因は、子供が親の財産を管理する権限を取得していなかったことにあります。子供といえども、権限なくして、親の財産を管理し、支出するなどをすることはできません。無権限で管理し、支出すれば、それは横領ないしは窃盗ということになりかねず、親に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになってしまうのです。そして、親が亡くなれば、この損害賠償請求権を相続人が相続することになるのです

ですから、そのような事態に陥らないようにするため、親の財産を管理する際には、親から財産管理権限を取得しておくことが必要です。

そのための一番手っ取り早い方法は、親に意思能力がバッチリとある段階であれば、親と財産管理契約を締結することです。不動産の管理、現預金の管理、出納管理など、子供にどのような財産管理を行う権限を授与するのかということを明確に契約で定めておくのです。こうしておけば親が亡くなった後、無権限で支出したということを言われなくてもすむことになります。

次に、親の意思能力がある段階でやっておくべきこととして、親と子供との間で、任意後見契約を公正証書により作成しておくことです。こうしておけば、後日、親が認知症になって判断能力を喪失しても、子供が速やかに任意後見人になって、財産管理権限を取得することができ、しかも、親の意思に即した財産管理を行うことができることになります。そして、この場合には家庭裁判所や任意後見監督人による監督を受けるので、相続になっても、他の兄弟姉妹から使い込みを疑われるリスクも格段に低くなります。

このような任意後見契約を締結することなく、親が認知症になってしまって、自ら財産管理をすることができなくなった場合には、法定後見の申し立てを家庭裁判所に対して行って、財産管理権限を取得します。法定後見には、親の意思レベルに応じて、補助、保佐、後見の各段階があります。後見の場合には、親の財産のすべての管理権限を取得しますが、補助や保佐の場合には、親の意思レベルに応じて、どのような財産管理権限を補助人や保佐人に授与するかは個別に決められることになります。申し立てにあたっては、弁護士に相談して行っていくようにすると良いと思います。後記表にまとめてありますのでご参照下さい。

 

3 親の財産を勝手に使い込んでいると思われるときは?

前回の事例で、認知症の親の財産を勝手に使い込んでいる事例を紹介しました。

もし、そのような事態を発見したときは、速やかに法定後見の申し立てを家庭裁判所に対して行いましょう。申立てができる人は,本人,配偶者,4親等内の親族,成年後見人等,任意後見人,成年後見監督人等,市区町村長,検察官です。兄弟姉妹は、4親等内の親族ですから、申し立てができるのです。他の兄弟姉妹が親の財産を使い込んでいるときに後見の申し立てをしようとすると、トラブルになることが多いですから、事前に弁護士に相談しつつ進めることが重要です。

 

4 親が自分で高額の商品を買ってしまったような場合は?

第1回のときに、親が高額の布団を購入してしまった事例をご紹介しました。そして、特商法によるクーリングオフや、消費者契約法に基づく取り消しについてご説明しました。

しかし、クーリングオフ期間が経過してしまった場合や、要件を充足しない場合は取り消しをすることができないという限界があります。

したがって、そのような事態にならないようにするには、親の認知症の進行度合いに合わせて法定後見を申し立てることが肝要です。

取消権の範囲は、後記の表に記載がありますように、補助、保佐、後見によって異なりますので、ご注意ください。

それから、よく誤解されがちなのですが、任意後見契約に基づいて、任意後見人になった場合には、任意後見人には取消権は認められていません。ですので、認知症の親が勝手に財産管理を行って不当な支出をしてしまうような場合には、別途法定後見の申し立てを行って法定後見人をつける必要があります。この点、要注意です。

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