認知症が招く法的トラブル 第1回

~認知症になった父が高額の羽毛布団を何枚も買ってしまった!~

1 認知症患者が激増しています!

最近、新聞・雑誌やテレビなどを見ていると、「ご両親が認知症かな!?と思ったら」とか、「認知症を防ぐ健康法!」などなど、認知症の話題が増えていますね。

それもそのはず、日本では人口が減少してきているというのに、認知症患者の数は増加の一途を辿っているのです。厚生労働省の調査によると、認知症又はその予備軍のひとが2012(平成24)年には462万人(約7人に1人)だったものが、2025(平成37)年には、なんと700万人(5人に1人)にも達するのではないかと推測されています。

認知症が進行すると、お金の管理ができなくなる、記憶ができなくなる、薬の管理ができなくなる、日常生活が営めなくなる、暴言を吐く、徘徊する、などなど、さまざまな問題を引き起こします。

当然のことながら、それに伴って法律問題に発展することも多発してくるでしょう。

そこで、今回から自分や家族、あるいは会社経営者が認知症になった場合に、どのような法律問題が発生するのか、その場合の対策などについて考えていくことにしましょう。

2 依頼者からのご相談

私には、80歳になるひとり暮らしの父甲太郎がいます。先日、訪ねてみたら、訪問販売で高級羽毛布団を何枚も購入していることがわかりました。父にはそれほど蓄えもありませんし、布団は以前にちゃんとしたものを買ってあるので、まったく必要ありません。この羽毛布団を返品してお金を返してもらうことはできるのでしょうか?

 

3 回答と対策

(1)クーリング・オフによる解除

このような場合には、まずは契約関係の書類等を見て、いつ購入したのか確認しましょう。

本件のような訪問販売でしたら、お父様の甲太郎さんは、購入してから8日以内であれば、無条件で解約してお金を返してもらうことが可能です。

訪問販売等の取引では、販売員から不意打ち的に、あるいは、冷静に考える間もなく商品等の購入をしてしまいがちです。そこで、特定商取引に関する法律では、訪問販売については、消費者が契約内容を記載した書面を受け取った日から8日以内であれば、消費者は、何ら理由がなくても一方的に契約を解除して、引き取り費用の負担と支払い済みの代金の返還を事業者に求めることができるものとされているのです。

このクーリング・オフは、訪問販売等、営業所外の場所で勧誘されて締結した契約のほか、営業所での契約でも、本来は商品の販売勧誘であるのにそれを秘して、消費者を営業所に呼び出して契約させるキャッチセールスなどでも認められています。同じようなことが起こったらすぐに確認してみましょう。

また、周囲の人が少なくとも8日(クーリング・オフ期間)に1回はお父様のところを訪ねて確認するようにすれば、不必要な買い物をしてしまったとしても、クーリング・オフして、代金を取り戻せます。介護の計画においても、クーリング・オフ期間なども考慮してみんなで協力することをお勧めします。

 

(2)消費者契約法に基づく取り消し

そうはいっても、8日に1回、訪問するということもなかなか難しいことです。発見が遅れてしまうということもあるでしょう。

このような場合、民法の一般原則による救済しか認められないとすれば、甲太郎さんは、契約当時、意思能力がなかったとか、業者による詐欺だったとか、強迫により契約を締結させられたものだと主張して、契約の無効や取り消しを主張するしかないことになります。

しかし、民法上の詐欺や強迫を理由とする取り消しの立証は、騙されたとか脅されたといった内心の状態を立証しなければならないほか、事業者側の故意も立証しなければならないため、実務上、極めて困難なことですので、高齢者の保護に欠けることになります。

このような消費者を悪質な事業者から保護するために定められたのが消費者契約法です。すなわち、消費者契約法は、詐欺や脅迫を理由とする意思表示の取消要件を緩和し、不実告知(業者がウソを言っていたような場合)、断定的判断の提供(確実に儲かる等と言ったような場合)、不利益事実の不告知(うまい話しを言っておいて都合の悪いことを隠していたような場合)、不退去(自宅に押しかけてきたので「帰ってくれ」と言ったのに帰らず困惑させられてやむなく契約させられた場合)などの場合には、消費者は契約を取り消すことができることとしたのです。

ですから、本件でも、契約日から8日を過ぎていたとしても、甲太郎さんは、事業者の不当な勧誘により、騙されて、あるいは困惑して契約を交わされたのであれば、この契約を取り消して、代金の返還を求めることができることになります。

但し、この消費者契約法に基づいて取消ができる期間は、追認可能時から6ヶ月以内、契約時から5年以内とされており、民法上の詐欺や強迫の取消期間(追認可能時から5年以内、契約時から20年以内)より短くなっているので、注意しましょう。

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