取締役に関する紛争(取締役間の紛争、会社と取締役との間の紛争、株主と取締役との間の紛争等)
タイトル
1.はじめに
取締役に関する紛争(取締役間の紛争、会社と取締役との間の紛争、株主と取締役との間の紛争等)に関するご相談は、弊所にお寄せいただく最も多いご相談の一つです。本稿では、取締役に関する紛争のうちの主要な類型(の一部)と解決のための準備事項等の視点をご紹介します。
2.取締役の解任をめぐる紛争
取締役を解任する
取締役を解任するには株主総会において解任決議を行う必要があり、解任決議を行うには、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合には、その割合以上)の賛成が必要です。株主権の帰属自体に争いがあるケースでは、まずはその点に関する当方の主張を裏付ける関係資料の収集・精査が必要ですし、株主権の帰属自体に争いがないケースでも、後日解任された取締役から解任決議の瑕疵を争われないように、法令や定款に基づく手続を履践する必要があります。また解任をした場合のリスク(例えば、下記②の損害賠償リスク、解任取締役から会社に対する貸付金について一括返済の請求を受けるリスク等)の有無・程度も事前に把握しておく必要があります。
弁護士に相談する必要性・メリット
上記の見通しの把握・方針検討には、裁判実務を踏まえた判断が不可欠であり、弁護士にご相談をいただくことが有用です。実際のところ、解任の手続面について弊所にご相談をいただいたものの、解任による具体的リスクも踏まえた総合的な検討の結果、解任ではなく(あるいは解任の準備と並行して)合意退任の交渉の方針に切り替え解決したケースも少なくないところです。解任をした場合のリスクについての見通しが不十分なまま実行をしてしまい、予期せぬ不利益な事態となってしまう場合もありますので、是非事前に弁護士にご相談をいただきたいと思っています。
解任した取締役から損害賠償請求を受けた
取締役を任期途中で解任した場合、解任した取締役から、残任期間の役員報酬相当額等について損害賠償請求を受けることがあります。解任に「正当な事由」がある場合には会社は賠償義務を負わないことから、「正当な事由」の存否やそれを立証する資料の有無を確認準備します。これらの確認準備にあたり、裁判実務を踏まえた判断が不可欠であること、弁護士へのご相談が有用であることは、上記①と同様です。
3.取締役の地位確認・地位不存在確認に関する紛争
会社の取締役ではないにもかかわらず、会社から取締役として扱われている場合に、会社に対して自らが取締役の地位にないことの確認を求めたり(例:辞任したはずなのに会社が辞任の効力を認めていない等)、逆に、取締役に就任しているのに会社との間でその地位に争いがある場合に自らが取締役の地位にあることの確認を求めたり(例:解任された取締役が当該解任の無効を主張する)する紛争類型です。特に後者の類型では、取締役の地位に関わる株主総会決議の決議取消訴訟や、株主総会の決議不存在又は無効確認訴訟という形で争われることがあります。株主権の帰属や、招集権限者による適法な株主総会招集手続が行われたか等が争点になりますので、株主名簿や定款、招集手続関連書類等の資料や過去の具体的経緯等を確認準備し方針を検討することが必要となります。
4.退任取締役の退職慰労金に関する紛争
退任取締役から退職慰労金の請求を受ける場合が典型例です。退職慰労金支給の株主総会決議が存在するか、株主総会から委任を受けた取締役会において具体的支給額が決定されているか、退職慰労金支給の内規が存在するか、退任取締役が取締役に就任したときの会社(もしくは取締役等)との取り決めが存在するか等によって、会社(あるいは取締役等の関係者)に退職慰労金の支給義務や、損害賠償義務等が発生するかどうかが変わってきます。各種議事録、内規、取締役就任時の具体的経緯等を確認し方針の策定と準備を行うこととなります。
当事務所の対応実績
退任取締役に対して、内規(退職金支給基準)での算定額よりも低額の退職慰労金を支給することを株主総会で決定したところ、退任取締役から内規での算定額との差額分について請求を受けた案件では、議事録の確認や関係者からのヒアリング等により、退職慰労金支給の株主総会決議の適法性や、その他特に会社又は取締役(兼株主)等の関係者が退任取締役に対して損害賠償義務を負う余地があるかどうかを検討し、株主総会で決定した支給額を超える支給義務はないものと判断しその旨相手方回答することで、相手方からの請求を封じることができました。
お困りの方は湊総合法律事務所までご相談ください。
<顧問弁護士について> 顧問弁護士が継続的に企業経営に関する法的なサポートをさせていただくことで、より効果的に法的トラブルを防止し、迅速かつ的確な問題解決を図ることが可能となります。 そのために私達の事務所では法律顧問契約を締結して対応させていただくことをお薦めしております。担当弁護士が貴社の状況を把握して、直接お会いして、あるいは電話、メール、Zoomなどの手段を適切に利用して、相談に臨機応変に対応させていただきます。 こうすることにより問題発生前に法的トラブルを防止し、 企業価値を高めることを可能としています。 法律顧問料はかかりますが、結果としてコストの削減にも繋がっていきます。 |
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