信用調査の必要性及び方法

信用調査の必要性及び方法

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信用調査の必要性及び方法

Q1.新規取引を開始するのにあたって、信用調査を行うことを検討しています。
このような調査を行うことは効果的でしょうか?

A1.債権回収を確実なものとするためには、回収不能に陥る可能性のある債権をできる限り抱えないよう取引開始前から十分に準備することが必要です。その1つの方法として、取引先の信用調査を行うことが求められます。

新規の顧客と取引を開始することは、会社の営業利益を増加させる機会を得るのと同時に、新たに債権の回収不能のリスクを負うことも意味します。債権回収を十分にできなければ、満足に営業利益を確保できないばかりか、会社経営に重大な影響を及ぼすことにもなりかねません。

そこで、取引先の信用調査をすることが不可欠です。また、信用調査から得られた情報は、今後、相手方の代金不払の場合に行う仮差押えや仮処分の対象を特定するためにも必要となるので、信用調査を行うことは必須といえるでしょう。

信用調査としては、まず、取引先の①支払能力、②支払意思を調査します。
①支払能力については、事業を行う上での資金繰りができているのか、相手方の資産の有無といった点を踏まえて判断します。
②支払意思については、当初から代金を踏み倒す意思で取引を行う取込詐欺の事案かどうかを判断します。
③取引先が現実に存在して事業活動を行っているか否かを調べる必要もあります。
これは後日、相手方が実は架空会社であった等と判明することを未然に防ぐために行います。

 

Q2.取引先の信用調査を行いたいのですが、どのような方法がありますか?

A2.取引先の信用調査には、相手方から直接情報を取得する方法と、相手方以外から間接的に情報を取得する方法があります。

 

1)相手方から直接情報を取得する方法

(1)営業担当者による相手方からの聞き取り
相手方から①支払能力や②支払意思について直接情報を取得する方法としては、営業担当者が相手方(法人であれば代表者や役員)から、会社の工場や支店、取引金融機関、主要な取引先等の会社の概要や相手方の主たる資産(代表者の個人名義の資産も含む)について聴取することが考えられます。
資産については、どこにどのような資産があるかについて聞き出すようにします。

ここでのポイントは、信用調査をしていることが相手方にわからないよう、さりげなく調査事項を聴取することにあります。そして、聴取した結果は、調査表としてまとめて情報を管理し、取引開始後に行う与信管理に活用することにします。

 

(2)決算書の入手
取引上、自己が相手方よりも強い立場である場合には、相手方に過去2~3年分の貸借対照表と損益計算書の提出を求め、これら決算書で有利子負債の額や売上高の増減等を分析することで、支払能力の有無を判断することが考えられます。

ただし、決算書に粉飾がある場合も考えられますので、決算書の数字のみから相手方の信用を判断するのは差し控えて、営業担当者からの報告等の情報を考慮して、総合的に判断するようにしたほうがよいでしょう。

 

(3)営業担当者による相手方の現場の観察
相手方から直接情報を取得するその他の方法としては、営業担当者に相手方の本社や営業所の現場を十分に観察させて、相手方に関する情報を取得することが考えられます。

現場の観察のポイントとしては、本社や営業所の現場に資金繰りに窮しているような兆候が現れていないか、在庫が目立ったり従業員の離職が相次いだりしていないか等、近い将来倒産するおそれのある会社に特有の兆候が現れていないかをチェックすることが挙げられます。
観察の結果についても、調査表などに記入して情報を統一的に管理しておきます。

 

2)相手方以外から間接的に情報を取得する方法

(1)商業登記簿謄本からの情報の取得
相手方以外から①支払能力や②支払意思について間接的に情報を取得する方法として、まず、商業登記簿謄本を入手してその内容を確認することが挙げられます。

ここで確認すべきポイントとしては、会社設立の年月日(業歴の長さ)や資本金の増加の有無、役員の辞任登記の有無、商号や本店所在地を頻繁に変更していないか等が挙げられます。
そして、本店所在地を移転している場合には、閉鎖登記簿謄本を入手し、現在の商業登記簿謄本と比べて、事業目的や役員が様変わりしていないかを調べる必要があります。

もし、役員等が様変わりしているのであれば、取込詐欺目的の会社である疑いがあるので注意が必要です。
また、③相手方が現実に事業活動を行っているかどうかについても、商業登記簿謄本に記載されている会社名及び本店所在地と、相手方から入手した名刺上の記載との間に不一致がないかどうか、商業登記簿謄本に記載されている役員の住所、氏名及び役員の構成と商談時に聴取した役員の氏名等の内容と不一致がないかについても確認するとよいでしょう。

 

(2)不動産登記簿謄本(全部事項証明書)からの情報の取得
不動産の登記簿謄本を入手してその内容を確認することが挙げられます。
ここでのポイントとしては、不動産の登記簿謄本にある甲区という欄において、誰が所有者であるかを確認するとともに、その欄に差押・仮差押登記の記載がなされていないか、乙区という欄において、抵当権者が数多くいないか、ノンバンクや相手方の取引先が抵当権者になっていないか等を確認することが挙げられます。

 

(3)信用調査会社からの情報の取得
相手方以外から間接的に情報を取得するその他の方法としては、信用調査会社から取引先の情報を取得することが挙げられます。信用調査会社からは、インターネットにて簡易かつ比較的安価に、売上高や利益、主要取引先等の情報を入手することができます。

ただし、信用調査会社の調査であっても、外部からの聞き取り調査である点で調査に限界があります。信用調査会社の提供する情報であっても、それに頼り過ぎることなく、あくまで相手方の信用を判断する際の一資料とするにとどめるのが無難でしょう。

 

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