顧問弁護士なら湊総合法律事務所|顧問弁護士.企業法務オンライン|東京弁護士会所属

湊総合法律事務所は、各分野において専門性の高い弁護士がチームを組み、クライアント様の利益の最大化を目指します。

医療過誤を起こした場合の責任


Q.医療従事者が医療過誤を起こしてしまった場合,どのような責任が
  発生するのでしょうか。


A.交通事故を起こした場合,運転者が①民事上の責任,②刑事上の責任,③行政上の責任を負うのと同様に,医療過誤を起こした場合も,医療従事者は,①民事上の責任,②刑事上の責任,③行政上の責任を負う可能性があります。

1 民事上の責任

 医療過誤(一般に,医療現場生じた事故全般を「医療事故」といい,医療事故のうち過失によって引き起こされたものを「医療過誤」と呼びます。)によって,患者に障害が生じた場合や患者が死亡した場合,患者には様々な損害が発生しますが,民事上の責任とは,これらの損害を賠償する責任です。
 損害には,一般の方が想像する以上のものが含まれます。具体例としては,医療事故によって新たに発生した治療関係費・付添看護費用,治療のための休職期間の休業損害,医療事故による障害のために必要となった装具・器具等(義手,義足等)の購入費,後遺障害により労働能力が低下した場合の逸失利益(事故前の労働能力があれば得られたであろう収入との差額),死亡した場合の逸失利益(生存していれば得られたであろう収入),慰謝料等です。
 もちろん,損害賠償請求が認められるには,医療機関の「過失」が存在し,当該過失と結果発生の因果関係が存在することが前提であり,訴訟では「過失」及び「因果関係」の有無が争われることとなります。
 民事上の問題について,具体的にどのような流れで事件が進行するのかについては,事項でご説明いたします。(リンク)

2 刑事上の責任

 医療過誤によって患者が障害を負った場合または死亡した場合には,医療従事者は業務上過失致死傷罪に問われる可能性があります。
刑事責任というと,逮捕を思い浮かべる方が多いかもしれませんが,医療過誤の刑事事件において医療従事者が逮捕されることはあまりありません。警察官及び検察官による取調べを経て,起訴(公判請求・略式請求),不起訴の処分が決定されます。
業務上過失致死罪については,刑法211条1項において,「五年以下の懲役若しくは禁固又は百万円以下の罰金に処する」と規定されております。

 業務上過失致死傷罪により起訴された場合,略式命令(裁判所の法廷における期日が開催されない簡易な裁判。罰金刑が科される。)による罰金20~50万円程度が量刑相場といえますが,近時では厳罰化傾向にあり,特に死亡事案については公判請求(裁判所の法廷において期日が開催される正式な裁判)され,執行猶予付きとはいえ禁固刑に処せられる事案も増えています。
取調べに望むに当たっての注意点については,●をご参照ください。

 なお,過失が認められ,業務上過失致死傷罪が成立する場合でも,結果が軽微である場合,過失の程度が軽い場合,示談が成立している場合等には,不起訴なるケースも多くあります。特に示談成立の有無は,検察官が,公判請求・略式請求・不起訴の処分を決定する重要な要素になっています。したがって,医療従事者の過失が明らかであれば,患者と早期に示談を成立させて,刑事処分を軽減する(公判請求相当を略式請求に,略式請求相当を不起訴に軽減する)努力をすることも重要となります。

3 行政上の責任

 医師法7条2項は,以下のように規定しています。
 医師が第四条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。 

 一  戒告
 二  三年以内の医業の停止
 三  免許の取消し 

 そして医師法4条3号は「罰金以上の刑に処せられた者」と規定しています。そして,厚生労働大臣が以上の行政処分を行う場合には,予め医道審議会の意見を聴かなければならないとされています。
 実際に行政処分を受けた事例は,詐欺・診療報酬不正請求,覚せい剤取締法違反,麻薬及び向精神薬取締法違反,強姦・強制わいせつ,道路交通法違反が多く,医療過誤により行政処分がなされるケースはかなり少数です。なお,医療過誤に基づく行政処分としては,数ヶ月の医業停止が多いようです。