新型コロナウイルス感染拡大の株主総会への影響
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新型コロナウイルス感染拡大の株主総会の影響
Q1) 当社はもうすぐ定時株主総会を開催する予定ですが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期したいと考えています。法的に可能でしょうか?
A1)事業年度終了後3か月以内に定時株主総会を開催している会社が多いと考えられますが、会社法は、必ずしも事業年度終了後3か月以内に定時株主総会を開催しなければならないと規定しているわけではありません。定時株主総会の開催時期に関する定款の定めがる場合でも、通常、天災その他の事由によりその時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときまで、その時期に定時株主総会を開催することを要求する趣旨ではないと考えられます。
法務省もホームページにおいて、「今般の新型コロナウイルス感染症に関連し,定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には,その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるものと考えられます。」との解釈を示していますので、感染拡大防止に向け、延期も含めた対応策を慎重に検討することが必要であると考えられます。
Q2)当社では、すでに本年の株主総会の会場を予約しており、今から変更することは困難ですし、延期するとなると、議決権行使に関する基準日の公告を行う必要があるなど、延期は困難です。予定どおりに株主総会を開催する場合に、どのようなことに留意すべきでしょうか?
A2)
① 議決権行使書等による議決権行使のお願い
近時の政府等による情報によれば、新型コロナウイルスは、密閉空間、人が密集し、密着した状況においてもっとも感染リスクが高まるといわれています。
株主総会会場は、この感染リスクが高い状況となる可能性があります。したがって、株主総会を開催する場合には、来場者数を抑制しつつ、議決権行使を促す対応を推し進め、特に、重症化し易いといわれる高齢者や基礎疾患を有する方々に対しては、出席を差し控えるように積極的に促していくことが大事だと考えらえられます。
そのため、まずは自社ホームページや招集通知において、議決権行使書やインターネットによって議決権を行使するよう積極的に依頼することが大切です。
そして、その際には、従来、株主総会に現実に出席した株主に、慣例的にお土産を提供していたなら、今回はこれを提供しないことを明記し、反対に、議決権行使書等により議決権行使をした株主に対し、何等かのプレゼント等のインセンティブを進呈するなどの工夫を凝らすと良いと考えられます。
②株主総会の短時間開催
次に、新型コロナウイルスの感染は、上記の密閉・密集・密着の状況が一定時間以上継続するとますますリスクが高まると言われていますから、株主総会の開催時間を極力短くする工夫が必要です。
もっとも、株主の発言時間を過度に短縮することは、株主総会の本質に悖るものとして適切ではありませんから、報告事項などは書面に記載して、一読するよう求めるのみで終了するなどを検討することが有効であると思われます。
③ハイブリッド型バーチャル株主総会の開催
単に株主に対して議決権行使書等による議決権行使を求めても、実際に株主総会の様子を知りたいという株主も相当数いることと思います。
そこで、株主がYouTubeなどインターネットを利用して、株主総会を傍聴できるような工夫も考えられます。これはあくまでもインターネットを介して株主総会を傍聴するだけで、現実の株主総会には出席しない株主に対するサービスの一環として行われるもので、万一、通信障害が発生したとしても、株主総会決議取消事由にもならないと考えられ、相当な方法であると考えられます。
もっとも、現実に出席するわけではないので、議決権の行使は、事前に議決権行使書やインターネット等による議決権行使をする必要がありますし、質問や動議の提出もすることができないことに注意を要します。また、映像を配信する際には、現実に出席している株主が映ってしまう可能性があり、肖像権侵害となるようなことが無いように十分に気を付ける必要があります。
以上の方法をさらに一歩進めて、現実の株主総会開催場所とは異なる場所にいる株主が、インターネット等の手段を用いることにより、株主総会に会社法上適法に出席し、株主総会に現実に出席している株主とともに審議に参加し、議決権を行使する「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」の開催も考えられます。
ハイブリッド型バーチャル株主総会については、令和2年2月26日に、経済産業省より策定された「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」に詳しく説明されていますからぜひご参照ください。
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