判例研究
退職慰労金を減額して支給する取締役会決議の適法性について研究しました。
令和5年1月25日(水)退職慰労金を減額して支給する取締役会決議の適法性について研究しました。
日時 | 令和5年1月25日(水) |
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場所 | 湊総合法律事務所 |
報告者 | 弁護士 久保 真衣子 |
内容 | 退職慰労金を減額して支給する取締役会決議の適法性について研究しました。 |
第402回 判例・事例研究会
日時:令和4年12月21日
場所:湊総合法律事務所
報告者:弁護士 久保 真衣子
【判例】
事件の表示 | 事 件 名 退職慰労金等請求控訴事件 事 件 番 号 福岡高裁宮崎支部 令和3年(ネ)第182号 決 定 控訴棄却 判決令和4年7月6日 |
事案の概要 | Y1会社(被告・控訴人)では、退任した取締役の退任慰労金額につき、退任時の報酬月額に、役位別に算出した在任年数にそれぞれの役位係数に乗じた数を累計した支給率累計を乗ずる方法により算出した基準額から、在任中特に重大な損害を与えた退任取締役についてはその金額を減額することができること(「特別減額」)等を内容とする内規(以下「本件内規」という。)が定められている。 Y1会社の代表取締役であるX(原告・被控訴人)は、自らの役員報酬の不当な増額等が新聞等で取り上げられたこと等により、平成29年6月開催の定時株主総会(以下「本件株主総会」という。)の終結時をもって代表取締役社長および取締役を辞任した。本件株主総会において、X外1名の取締役につき、Y1会社の一定の基準に従い、相当額の範囲内で退任慰労金を贈呈することとし、その金額、贈呈の時期、方法等を取締役会に一任するとの第5号議案が審議され承認可決された(以下「本件株主総会決議」という。)。その際、Xは、議長として、X以外の退任取締役の退任慰労金については本件内規に従って支払う一方、自らに対する退任慰労金については、金額の適正を確保するために中立かつ公正な調査委員会を設置し、その調査結果を踏まえ、取締役会で金額を決定してもらい、その決定に従うと説明し、その金額、支払方法、支払時期等は取締役会に一任してほしいなどと述べていた。平成30年2月開催のY1会社の取締役会で、弁護士等合計5名で構成される調査委員会(以下「本件調査委員会」という)の最終報告書が示した特別減額事由に基づく減額可能額3億5551万円の90%を、退任慰労金の基準額から差し引いた5700万円を退任慰労金としてXに支給する旨の決議(以下「本件取締役会決議」という。)がなされ、同年3月にこれが支払われた。なお、同報告書において算定された減額可能額のうち大きな部分を占めていたのは、CSR事業と呼ばれる事業等への支出(以下「CSR関連支出」という。)である約2億500万円であった。平成30年6月に開催されたY1会社の第49回定時株主総会では、Xに対して退任慰労金として5700万円を支給したことを含む計算書類が承認可決され、また、本件訴え提起後の令和2年6月開催のY1会社の第51回定時株主総会では、本件株主総会決議の趣旨は、Xに対する退任慰労金につき、本件内規による金額を上限として、本件調査委員会の報告に基づいて取締役会において支給の可否も含めて決定し、具体的な支給額等の決定を取締役会に一任したものであること、本件取締役会決議は、本件株主総会決議に基づいて取締役会に与えられた裁量権を適切に行使した相当なものであること、および、Xに対しては5700万円を超えて退任慰労金を支給しないことを確認する旨の議決がなされた。Xが、Y1会社およびXの後任の代表取締役社長Y2(被告・控訴人)に対して、選択的に、退任慰労金等または損害賠償として、2億350万円(うち退任慰労金相当額は1億8500万円)の支払を求めた事案。原判決(宮崎地判令和 3・11・10 LEX/DB25591482)が、CSR関連支出については「特に重大な」損害を与えたとは認められないにもかかわらず、本件取締役会決議はこのCSR関連支出についてまで特別減額をしたものであって「本件株主総会決議で与えられた裁量を逸脱ないし濫用したものと認められる」として、Y1会社につき会社法350条、Y2につき不法行為に基づくXの損害賠償請求を認容したため、Yらが控訴。 |
判旨(抜粋) | 控訴棄却。 「本件株主総会の議事の経過に照らすと、・・・・・・本件株主総会決議は、Xに支給する退任慰労金につき、本件内規を適切に解釈適用し、その額を算定することを取締役会に委任するものであったと認めるのが相当である。Yらは、本件株主総会において、議長としてXが行った議事内容の説明をその主張の根拠とするが、・・・・・・Xの上記説明は、Xの退任慰労金につき、第5号議案の内容を前提に、本件調査委員会における調査結果を踏まえ、取締役会が本件内規を適切に解釈適用して決定する金額を受け入れる意向を述べるものにすぎないと認められ、第5号議案の内容を変更するものではないと解するのが相当である。また、Yらは、本件株主総会後に開催された第49回定時株主総会及び第51回定時株主総会における決議内容等をその主張の根拠とするが、本件取締役会決議後に開催された株主総会の決議等に基づいて、本件株主総会決議の議事の経過により認められる同決議の趣旨に反する認定を行うことは相当ではない。」 以上 |
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