免責条項について研究しました。

判例研究

免責条項について研究しました。

令和3年9月1日(水)免責条項について研究しました。

日時 令和3年9月1日(水)
場所 湊総合法律事務所
報告者 弁護士 沖 陽介
内容 免責条項について研究しました。

第399回 判例・事例研究会

日時 令和3年9月1日

場所 湊総合法律事務所

報告者   弁護士 沖 陽介

【判例】

事件 東京高判令和2年11月5日(令和2年(ネ)第1093号、令和2年(ネ)第2358号)
免責条項等使用差止請求控訴、同付帯控訴事件(「モバゲー」事件)
事案の概要 被控訴人(原告X)は、消費者契約法(以下「法」といい、平成30年法律第54号(以下「本件改正法」という。)による改正前の法を「改正前法」という。)13条1項所定の認定を受けた適格消費者団体であり、控訴人(被
告Y)は、インターネットを使ったポータルサイト「モバゲー」を運営する株式会社である。
この「モバゲー」の利用者は、Yが提供するサービス等について「モバゲー会員規約」(以下「規約」という。)を含む内容を締結する必要がある。規約には次の条項が存在していた。
第7条(モバゲー会員規約の違反等について)
1 モバゲー会員が以下の各号に該当した場合、当社は、当社の定める期間、本サービスの利用を認めないこと、又は、モバゲー会員の会員資格を取り消すことができるものとします。ただし、この場合も当社が受領した料金を返還しません。
a 会員登録申込みの際の個人情報登録、及びモバゲー会員となった後の個人情報変更において、その内容に虚偽や不正があった場合、または重複した会員登録があった場合
b 本サービスを利用せずに1年以上が経過した場合
c 他のモバゲー会員に不当に迷惑をかけたと当社が合理的に判断した場合
d 本規約及び個別規約に違反した場合
e その他、モバゲー会員として不適切であると当社が合理的に判断した場合
2 当社が会員資格を取り消したモバゲー会員は再入会することはできません。
3項 当社の措置によりモバゲー会員に損害が生じても、当社は、一切損害を賠償しません。
Xは、規約7条3項が、法8条1項1号及び3号に定める事業者の債務不履行責任または不法行為責任を全部免除する条項に該当するとしたうえで、法12条3項に基づき、当該各条項を含む申込みや承諾の意思表示及びそのための事務の差止めを求めて本件訴訟を提起した。
関係法令 法第8条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)
1 に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
判旨(一部抜粋) ・ Yの主張:規約7条1項c号及びe号の「判断」とは、「合理的な根拠に基づく合理的な判断」であることが当然の前提となっており、規約7条3項はこのような場合に損害賠償責任が発生しないことを確認的に定めたものであって免責条項ではない。
裁判所の判断:「本件規約7条3項には、単に「当社の措置により」との文言が用いられ、それ以上の限定が付されていないところ、前
記説示したとおり、会員において、同条1項c号及びe号該当性につき明確に判断することは、極めて困難である。さらに、同条3項が
「一切損害を賠償しません。」と例外を認めていないことも併せ考慮すると、同項については、契約当事者(控訴人及び会員)の行為規範
として、控訴人が不法行為等に基づく損害賠償責任を負わない場合について確認的に規定したものと解することは困難である。」 ⇒免責条項である。
・ Yの主張:本件規約7条3項は控訴人が損害賠償責任を負わない場合にこれを負わないことを確認的に規定したものであって、免責条項ではない旨主張する。
裁判所の判断:「本件規約7条1項c号及びe号にいう「合理的に判断した」の意味内容は極めて不明確であり、控訴人が「合理的な」判断をした結果会員資格取消措置等を行ったつもりでいても、客観的には当該措置等が控訴人の債務不履行又は不法行為を構成することは十分にあり得るところであり、控訴人は、そのような場合であっても、本件規約7条3項により損害賠償義務が全部免除されると主張し得る。」 ⇒全
部免除条項である。
・ Yの主張:控訴人が客観的に損害賠償責任を負う場合は、そもそも本件規約7条1項c号又はe号の要件を満たさず、したがって、本件規約7条3項により免責されることもない。
裁判所の判断:しかし、事業者と消費者との間に、その情報量、交渉力等において格段の差がある中、事業者がした客観的には誤っている判断
が、とりわけ契約の履行等の場面においてきちんと是正されるのが通常であるとは考え難い。控訴人の主張は、最終的に訴訟において争われる場面には妥当するとしても、消費者契約法の不当条項の解釈としては失当である。」
・ Yの主張:①一般に合理的限定解釈は許されること、②本件規約7条1項c号及びe号には多数の例示が示されていること、③他の企業においても「合理的な判断」との条項の意味内容につきトラブルが生じていないことからすると、本件規約7条1項c号及びe号の意味内容は明確である。
裁判所の判断:しかし、上記①については、事業者は、消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が、その解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易なものになるよう配慮すべき努力義務を負っているのであっ
て(法3条1項1号)、事業者を救済する(不当条項性を否定する)との方向で、消費者契約の条項に文言を補い限定解釈をするということ
は、同項の趣旨に照らし、極力控えるのが相当である。また、上記②については、控訴人が主張する例示(乙10)によっても、本件規約7条
1項c号及びe号該当性が明確になるものとは解し難い。上記③についても、控訴人が主張するとおり、他の企業において、「判断」、「合理的な判断」といった条項の意味内容につきトラブルが生じていないとしても、そのことをもって、本件規約7条1項c号及びe号の「合理的な判断」の意味内容が明確であることを意味するものではない。」

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