取締役会設置会社における株主総会決議による代表取締役の選定について研究しました。

判例研究

取締役会設置会社における株主総会決議による代表取締役の選定について研究しました。

令和3年1月20日(水)に取締役会設置会社における株主総会決議による代表取締役の選定について研究しました。

日時 令和3年1月20日(水)
場所 湊総合法律事務所 第1会議室
報告者 弁護士 島村 光
内容 取締役会設置会社における株主総会決議による代表取締役の選定について

第368回 判例・事例研究会

日時 令和3年1月20日

場所 湊総合法律事務所

報告者 弁護士 島村 光

事件の表示 最決平成29年2月21日
事案の概要 Y1は,非公開会社で,取締役会を設置する旨の定款の定めを有する取締役会
設置会社である。Y1の定款には,代表取締役は取締役会の決議によって定めるものとするが,必要に応じ,株主総会の決議によって定めることができる旨の定め(以下「本件定め」という。)がされていた。Xは Y1の代表取締役であった者である。
Y2は,平成 27 年 9 月 30 日に開催された Y1の株主総会(以下「本件株主総
会」という。)において取締役に選任する旨の決議及び代表取締役に定める旨の決議がされた者である。Xが Y1及び Y2に対し,本件株主総会の上記各決議には法令違反があるとして,Y2の取締役兼代表取締役の職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分命令の申立てをした。
原決定は,代表取締役の選任・解任権限を株主総会に認めたからといって,取
締役会の監督権能が失われるものではなく,本件定めが無効であるとはいえないとして,Xの申立てを却下すべきものとした。Xから許可抗告の申立てがあったところ,原審(東京高裁)はこれを許可した。
争点 取締役会設置会社である非公開会社における、取締役会の決議によるほか株主
総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めの効力
(会社法295条2項の解釈)
結論 抗告棄却(定款の本件定めは有効)
判旨 ①取締役会を置くことを当然に義務付けられているものではない非公開会社
(法327条1項1号参照)が,その判断に基づき取締役会を置いた場合,株主総会は,法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議をすることができることとなるが(法295条2項),法において,この定款で定める事項の内容を制限する明文の規定はない。そして,②法は取締役会をもって代表取締役の職務執行を監督する機関と位置付けていると解されるが,取締役会設置会社である非公開会社において,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができることとしても,代表取締役の選定及び解職に関する取締役会の権限(法362条2項3号)が否定されるものではなく,取締役会の監督権限の実効性を失わせるとはいえない。
以上によれば,取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議
によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定
款の定めは有効であると解するのが相当である。
面接条文 会社法
第二百九十五条(株主総会の権限)
1 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。(趣旨:所有と経営が未分離の会社における株主総会の万能性)
2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この
法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。(趣旨:所有と経営の分離した会社における、業務執行の決定の合理化)
第三百六十二条(取締役会の権限等)
2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
三 代表取締役の選定及び解職(趣旨:代表取締役に対する取締役会の監督の実効性を担保)
第三百四十九条(株式会社の代表)
3 株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。(取締役会非設置会社は総会決議で代表取締役を選定できるというだけで、取締役会設置会社については何も定めていないという読み方 or 取締役会非設置会社でなければ総会決議で代表取締役を選定することができないという読み方)
補足 以下の5パターンが存在し、本決定はそのうちの一つのパターンについて判断
した。
A:非公開会社・取締役会非設置→295条1項
代表取締役の選定・解職について、取締役らと株主総会で権限併存制(349
条3項)。株主にとって問題がなければ取締役らの判断を尊重しておき、取締役らと株主で見解が対立した場合には株主総会で最終決定できる(反対派の取締役を解任し、株主総会側の人間を選任することで、総会決定が最終決定となる)。
B:非公開会社・取締役会設置→295条2項
B−1:取締役会・株主総会で権限併存とする定款の定め→本決定で○
理由
①権限併存の定款の定めを制限する明文の規定はない。
②代表取締役に対する取締役会の監督権限を妨げない。
少なくとも非公開会社においては、所有と経営の分離のある会社であって
も株主による定款自治の自由を尊重する考え方。
B−2:株主総会の専権とする定款の定め→判例なし
有効説も有力(本決定の理由②が問題となるが、取締役会も議題を定めて総会を招集でき、それで足りるという)。ただ、私見としては、B−1の方法をとっておけば、株主は反対派の取締役を解任し、株主総会側の人間を選任することで、総会決定が最終決定とすることができるので、B−2の方法はとる必要性が高くないと思われる。
C:公開会社(取締役会設置必須)→295条2項
C−1:取締役会・株主総会で権限併存とする定款の定め→判例なし
本決定の理由①及び②は、形式的には妥当する。もっとも、所有と経営の分離がより強まった機関構造において、同じ判断がなされるかは疑問がある。
C−2:株主総会の専権とする定款の定め→判例なし

 

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