判例研究
賃貸借契約上の条項における消費者契約法 10 条への該当性について研究しました。
令和4年6月22日(水)賃貸借契約上の条項における消費者契約法 10 条への該当性について研究しました。
日時 | 令和4年6月22日(水) |
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場所 | 湊総合法律事務所 |
報告者 | 弁護士 野坂 真理子 |
内容 | 賃貸借契約上の条項における消費者契約法 10 条への該当性について研究しました。 |
「第395回判例・事例研究会」
テーマ:賃貸借契約上の条項における消費者契約法10条への該当性
日時:令和4年6月22日
場所:湊総合法律事務所
報告者:弁護士 野坂 真理子
【消費者契約法】
第 10 条 ※要約
法令中の公の秩序に関しない規定(任意規定)の適用による場合に比して消費者の権利を
制限し又は消費者の義務を過重する消費者契約の条項であって、信義則に反して消費者
の利益を一方的に害するものは無効とする
判例
事件の表示 | 事件名 消費者契約法 12 条に基づく差止め等請求控訴事件 判決日 令和3年3月5日付判決 |
事件の概要 | 家賃債務保証契約に含まれる以下の条項が、自力救済を正当化する 条項として消費者契約法10条に該当するか否かが争われた事例 ・賃借人が賃料等の支払いを2ヶ月以上怠り、家賃債務保証業者 (Y)において合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡がとれ ない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から 賃借物件を相当期間利用していないものと認められ、かつ、賃借物 件を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情 が存するときに、賃借人が明示的に異議を述べない限り、賃借物件 の明け渡しがあったものとみなす権限を家賃債務保証業者に付与 する趣旨の条項 ・明け渡しがあったとみなす場合に Y が建物内等に残置する動産 類を任意に搬出・保管・処分することに原契約賃借人が異議を述べ ないとする条項 |
判旨 | 【第一審】 当該条項は、賃貸借契約(以下「原契約」という)が終了してお らず、賃貸人に賃借物件の返還請求権が発生していない状況で、Y らが自力で賃借物件に対する原契約賃借人の占有を排除すること になり、自力救済行為であって、法的手続によることのできない必 要性緊急性の存するごく例外的な場合を除いて不法行為に該当す るなどとして、消費者契約法違反であると認定 【控訴審】 本件4要件は,一般に,原契約賃借人が賃借物件の所持を失い, あるいは,賃借物件についての占有の意思を失っている蓋然性が高 い場合の徴表とされる,原契約賃借人が賃料等の支払を2か月以上 怠っていること(①),(原契約賃貸人からその権限を付与された)一審被告が合理的な手段を尽くしても原契約賃借人本人と連絡がとれない状況にあること(②),電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から原契約賃借人が賃借物件を相当期間利用していないものと認められること(③),を原契約賃借人が賃借物件についての占有権の喪失を認めるために必要な要件として規定するととともに,上記3要件を満たす場合においてもなお,原契約賃借人の賃借物件についての占有権の消滅を認めるには合理的な疑いが残る 場合が排除できないことに鑑み,原契約賃借人の賃借物件について の占有を放棄する意思が客観的に看取できる事情が存すること (④)を要件として加えることにより,原契約賃借人が賃借物件に ついて占有する意思を最終的かつ確定的に放棄した(ことにより賃 借物件についての占有権が消滅した)ものと認められるための要件 をその充足の有無を容易かつ的確に判断することができるような 文言で可能な限り網羅的に規定しようとしたものであると解され る。」として、本件条項は占有権が消滅したと認められる場合に、Yに賃借物件の明渡しがあったとみなす権限を付与する趣旨の規定 であると判断。また、本件条項が原契約である賃貸借契約の終了が 要件となっていない点について、Y により明渡しがあったとみなさ れた場合には、その時点で原契約は当然に終了すると解するのが自 然かつ合理的としたうえで、原契約賃借人が明示的に異議を述べな い限り、Y に対し、賃借物件の原契約が継続している場合はこれを 終了させる権限を付与する趣旨の規定であるとして消費者契約法 に反しないと判示した ※参考 以下の行為は自力救済にあたり違法と認定された (1)賃貸借契約終了後、借主が建物内の所有物件を貸主の指定する期限内に搬出しないときは、貸主は、これを搬出保管又は処分の処置をとることができる旨の特約に基づいて、賃貸人が契約解除後に賃借人の意思に反して建物内の動産類を搬出・処分した行為(東京高判平成 3 年1 月 29 日)、(2)賃料を滞納した場合に、賃貸人は原契約賃借人の承諾を得ずに本件建物内に立ち入り適当な処置をとることができ、賃料を 2 カ月分以上滞納した場合は直ちに賃貸借契約を解除できるとする旨の特約に基づき、管理会社が 賃料を滞納した原契約賃借人の貸室に立ち入った行為(東京地判平成 18 年 5 月 30 日) |
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- <債権回収 契約締結時について>
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- <債権回収段階について>
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- 内容証明郵便
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- 【解決事例】訴訟手続(通常訴訟手続)により売買代金800万円を回収した事例(商品の売買)
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- 取引先倒産の場合の債権回収
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