労働契約法18条の無期転換申込権を制限する条項の有効性について研究しました。

判例研究

労働契約法18条の無期転換申込権を制限する条項の有効性について研究しました。

令和4年3月2日(水)労働契約法18条の無期転換申込権を制限する条項の有効性について研究しました。

日時 令和4年3月2日(水)
場所 湊総合法律事務所
報告者 弁護士 横田 将宏
内容 労働契約法18条の無期転換申込権を制限する条項の有効性について研究しました。

「第392回判例・事例研究会」

テーマ:労働契約法18条の無期転換申込県を制限する条項の有効性
日時:令和4年3月2日
場所:湊総合法律事務所 第1会議室
報告者:弁護士 横田 将宏

判例

事件の表示 事件名     無期転換逃れ(ママ)地位確認請求事件
事件番号 横浜地裁川崎支部判決 平成 30 年(ワ)第 563 号
判決日付 令和3年3月30日
事件の概要 原告(労働者)と被告(会社)との間で有期雇用契約を締結(以下「本件契約」)。本件契約には、最初の雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはない旨の条項(以下「本件条項」)が付されていた。会社は、本件条項に基づき当初の雇用契約から5年の期間満了を以て原告を雇止めした。原告は、①本件条項は労働契約法18条の無期転換申込権を回避しようとするもので無効であり、原告には雇用継続の合理的期待がある、また、②上記雇止めも客観的合理性、社会通念上の相当性が認められず許されないとして、地位確認+バックペイを請求。
本判決の判断要旨 1 本件契約は、契約締結当初から期間1年の有期雇用契約として締結されたもので、雇用契約書にも、契約期間の更新限度が平成30年6月30日までの5年である旨が明確に定められており、かかる契約内容を十分に認識した上で原告は本件契約を締結した。なお、有期雇用契約の更新回数は4回であったが、各更新時にいずれも原告が署名押印した契約書が作成され、次が更新上限となる4回目の契約更新に際しては、管理職が更新上限又は契約の更新をしない旨等、重要事項を読み上げて確認する手続が取られ、原告が当該説明を受けたことの確認書も作成された。このように、労働者において未だ更新に対する合理的期待が形成される以前の段階である雇用契約締結当初から、更新上限があることが明確に示され、原告もそれを認識の上本件契約を締結していた。
2 (本件条項等が無期転換申込権の事前放棄の効果を生ずることにつき説明されなかったこと等を理由として、労働者が契約するかどうかの自由意思を阻害するものであるとして、雇用継続に対する合理的期待の判断において考慮すべきではないとの原告の主張につき)しかし、本件契約においては、当初の契約締結時に不更新条項が明示的に付されており(したがって、労働条件の変更に対する労働者の同意の有無についての判断の方法につき判示した最高裁平成28年2月19日第二小法廷判決・民集70巻2号123頁(山梨県民信用組合事件)の射程には入らない。)、このような場合、通常は、まだ更新に対する合理的期待が形成される以前であり、労働者において、労働者が契約するかどうかの自由意思を阻害するような事情はない。
3 (本件条項等は労働契約法18条の適用を免れる目的で設けられたものであり、公序良俗に反し無効である旨の主張につき)しかし、労働契約法18条は、有期契約の利用自体は許容しつつ、5年を超えたときに有期雇用契約を無期雇用契約へ移行させることで有期契約の濫用的利用を抑制し、もって労働者の雇用の安定を図る趣旨の規定である。このような趣旨に照らすと、使用者が5年を超えて労働者を雇用する意図がない場合に、当初から更新上限を定めることが直ちに違法に当たるものではない。
4 以上によれば、本件契約の満了時において、原告が本件契約による雇用の継続を期待することについて合理的な理由があるとは認められない。したがって、本件契約は、期間満了日の経過をもって終了したものと認めるのが相当であり、その余の争点について判断をするまでもなく、原告の請求は理由がない。

【参考文献】厚生労働省サイト「無期転換ルールに関する主な裁判例」
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000824817.pdf

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