顧問弁護士なら湊総合法律事務所|顧問弁護士.企業法務オンライン|東京弁護士会所属

湊総合法律事務所は、各分野において専門性の高い弁護士がチームを組み、クライアント様の利益の最大化を目指します。

  • 事務所案内
  • 顧問弁護士
  • セカンドオピニオン
  • セミナー・講演
  • 弁護士紹介
  • アクセス

第24 高度人材の活用(3) 事業規模・決定権など判断 「投資・経営」資格の要件で

問題

当社は、日本企業が100パーセント出資して設立した資本金5000万円の商社(甲株式会社)である。次回の株主総会で、これまで「人文知識・国際業務」の在留資格で雇用していた中国人Aを取締役に選任したいと考えている。この場合、「投資・経営」の在留資格に変更すべきか。

 また、当社は、一昨年、中国の有限公司と共同出資して乙株式会社を日本国内に設立したが、業績が今ひとつであった。そこで、これまでの日本人の代表取締役に加えて、アジアビジネスの経験が豊富で、中国に生活の本拠がある中国人Bにも代表取締役に就任してもらいたいと考えている。中国人Bは「投資・経営」の在留資格を取得することは可能か。

回答

・ 中国人Aについては、甲株式会社は日本企業が100パーセント出資している法人であるから「投資・経営」の在留資格は取得し得ず、従来どおり「人文知識・国際業務」の在留資格で取締役に就任させれば良い。

・ 中国人Bについては、乙株式会社に継続性・安定性が認められ、事業規模等との対比により複数の代表取締役が必要であると判断される場合には「投資・経営」の在留資格が認められる可能性がある。

解説

1 中国人Aについて

 在留資格「投資・経営」とは、①事業の経営を行う活動、又は②事業の管理に従事する活動をいう。そして、事業の経営または管理を行う活動とは、実質的に事業運営における重要事項の決定や経営判断に携わることを意味し、代表取締役、取締役及び監査役等の役員や、部長、工場長及び支店長等の管理職員がこれに該当する。

 また、「投資・経営」の在留資格は、投資した資本金を運用して経営に参加するために日本に在留する外国人に認められたものであるから、この在留資格が認められるためには、当該外国人もしくは外国法人が実質上その会社等の経営を左右できる程度の相当額の投資をしていること(最低でも500万円以上)が必要である。

換言すると、その事業が日本人もしくは日本法人のみが投資しているものであるときは、「投資・経営」の在留資格には該当しないことに注意が必要である(詳しくは入国管理局ホームページ『総合規制改革会議の「規制改革の推進に関する第3次答申」に関する在留資格認定』(http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukan20.html)をご参照頂きたい。)
 
したがって、甲株式会社は、日本企業が100パーセント出資している法人であるから「投資・経営」の在留資格は取得し得ない。よって、中国人Aが現在取得している「人文知識・国際業務」の在留資格において取締役に就任させれば良い。

2 中国人Bについて

(1) 企業の安定性・継続性
以上に対し、乙株式会社は、日本企業と中国の有限公司の合弁で設立されていることから、中国人Bについては「投資・経営」の在留資格の取得が問題となり得るが、同社が一昨年設立されたばかりであることから、企業の安定性・継続性が認められるかが問題となる。

同要件は、単に出資金額の大小によるものではなく、実際の売上高や利益率、従業員数等の企業規模や今後の売上見込み等を総合的に検討して判断される。設立後間がなく、直近の決算においては売上や利益が増加していない場合でも、直ちに事業の継続性が認められないというものではなく、直近2期分の決算書や今後の事業計画書等を準備して、安定性継続性が認められることを証明できれば「投資・経営」の在留資格が認められる。

乙株式会社の場合も、入国管理局に対し、以上述べた事項を証明できれば安定性・継続性の要件を充足するものとして扱ってもらえるであろう。

(2) 外国人が海外に居住する場合
 質問の事例のように、海外に居住する外国人を「投資・経営」の在留資格で登用することも可能である。「投資・経営」の在留資格に関しては、日本に本拠がある事業の経営または管理を行う場合であればよく、必ずしもその生活の基盤が日本になければならないというものではない。

海外に居住しており、今後も継続して海外で生活をしていこうと考えている場合でも、経営上の判断をするために会議等に参加したり、日本における従業員への指示や連絡等のために短期間来日するときでも「投資・経営」の在留資格に該当し得る(但し、このような短期間の来日の場合に、必ず「投資・経営」の在留資格で入国しなければならないというものではなく、「短期滞在」の在留資格で入国することも可能である。)。

本事例の場合には、日本に事業所の本拠が所在するのであるから、中国人Bがそのまま中国に居住している場合でも、「投資・経営」の在留資格を取得し得ることになる。

(3) 共同経営者となる場合
次に、中国人Bは、従来の日本人代表取締役と共同で経営にあたることになるが、このように複数の者が同じ事業の経営または管理を行う場合に「投資・経営」の在留資格が認められるかどうかは、事業内容や業務等を勘案して、果たして複数の者が経営または管理を行う必要があるのかどうか、複数の者が携わらなければ事業全体の経営または管理を行うことができないのかどうかという視点から判断される。

たとえば代表取締役が2名いる場合であっても、従業員が少数で、事業も一地方都市のみでしか行っていない会社においては、実質的に経営上の決定・判断を行っている者についてしか「投資・経営」は認められず、もう一方の者については「人文知識・国際業務」等別の在留資格への該当性を判断されることになる。

したがって、乙株式会社が相当の規模を備え、従前よりの代表取締役と中国人Bの両方が経営上の実質的判断を行っている場合には「投資・経営」の在留資格が認められることになる。