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第22 高度人材の活用(1)~在留資格に基づき採用 広がるIT人材の業務範囲~

問題

当社は、IT関連企業で、資本金1億円、従業員500名の規模で経営している甲という株式会社である。近時、日本企業の中国進出が増大していることから、中国の判例実務に関するソフトウエア開発を行うため、中国の法学院を卒業した中国人で、中国の判例実務に関する法律知識に加えてコンピューターに関する知識も兼ね備えたAと、高等学校卒業後IT技術開発の実務経験が10年未満の中国人Bとインド人Cを雇用したい。

当社は、A、B及びCを採用することはできるか。

回答

・ 中国人Aについては、その行わせる業務が中国の判例実務に関するもので法律知識がなければソフトウエア開発業務を遂行することができないものであれば在留資格「人文知識・国際業務」に該当するものとして就労させられる可能性がある。

・ 中国人Cとインド人DについてはいわゆるIT告示で認められる資格を有している場合に、更にインド人DについてはインドのDOEACC資格を有している場合には在留資格「技術」に該当するものとして就労させられる可能性がある。

解説

1 中国人Aの採用の可否

日本に在留する外国人は、原則としてその有する在留資格によって認められた範囲内のみで就労することが可能である。

この点、甲社が中国人Aに行わせようとしている業務は中国の判例実務に関するソフトウエア開発である。この場合、甲社が、理工系の知識を用いて行うソフトウエア開発業務そのものを行わせようとしている場合には、中国人Aは、中国の法学院を卒業しているに過ぎないので、特別の実務経験を有する等の特段の事由が無い限り在留資格は認められず、甲社において就労させることはできない。

しかし、Aは、中国の法学院を卒業した者であり、中国法に関する法律の専門知識を有している。今回開発しようとしているソフトウエアは中国の判例実務に関するものであり、中国法に関する法律知識がなければ開発業務を遂行することができないもので、甲社がそのような業務をAに行わせようというのであれば、在留資格「人文知識・国際業務」(本邦の公私の機関との契約に基づいて行う法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する知識を必要とする業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動)に該当するものとして甲社において就労させることができる可能性がある。

2 中国人Bとインド人Cの採用の可否

(1) 中国人Bとインド人Cは、それぞれ10年未満のIT技術開発の実務経験を有する者である。このようにIT関係について長い経験を有する場合に認められる在留資格は「技能」か「技術」のいずれに該当するか。

この点、在留資格「技能」とは、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を有する業務に従事する活動のことを意味し、個人の実務経験の集積によって身につけた能力を活かして公私の機関の業務に従事するものが妥当する。そして、「技能」に関してはその職種が基準省令に限定列挙されており、ここに列挙されていない職種については在留資格が認められないこととなっている。

これに対して、在留資格「技術」とは、理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事する活動を意味し、学術上の素養をその基盤とするもので、業務に従事するために必要な知識を習得してそれを活用して行うものである。

したがって、IT技術者については、個人の実務経験の集積というより、業務に従事するための知識の有無に力点があるものであるから「技術」の資格該当性が問題となることになる。

(2) 次に在留失格「技術」に該当するためには、下記のいずれかの基準を充足する必要がある。

① 従事しようとする業務について、これに必要な技術もしくは知識に関する科目を専攻して大学を卒業するか、これと同等の教育を受けていること。

② 10年以上の実務経験により、当該技術もしくは知識を習得していること。

③ 情報処理に関する技術または知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格するか、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有していること。

中国人Bとインド人Cは、大学を卒業しておらず、IT開発実務経験も10年未満であるから上記①②の基準は満たさないが、③の基準を充足すれば在留資格「技術」に該当する可能性がある。③は「IT告示」と言われるもので、一定の情報処理関連資格に合格した者について職歴も学歴も関係なく在留資格「技術」を認めるものである。

例えば、基本往訪技術者試験や上級システムアドミニストレータといった国内資格はもちろん、海外の資格も広く認められている。これらの資格を有していれば、学歴も職歴も関係なく在留資格「技術」が認められる。したがって、BとCがIT告示で認められた資格を有していれば在留資格「技術」が認められ、甲社において就労することが認められる可能性がある。

(3) 更に、インド人CがインドのDOEACC制度上の資格レベルA、B及びCを有している場合には、上記①の大学卒業と同等以上の教育を受けているものとして在留資格「技術」が認められることが多い。これは経済産業省が日本で実施する情報処理技術者試験とインドのIT省が実施するDOEACCが試験レベルとして同等であると相互認証したことに基づくものである。

以上、述べたようにIT関連の業務については、近時、広く在留資格が認められるようになっていることから、企業の労務担当者は国内だけでなく国外からも幅広くIT技術者の登用をご検討いただきたい。