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第21 税務関係の対応~居住者か否かで区分 住民税は特別徴収が必要~

問題

当社は、近年、海外との取引が増加してきたことから、外国人従業員を複数名採用することにした。当社は今後、採用した外国人従業員について、
① 給与等の支給の際、源泉徴収はすべきか、その際どのように行えば良いか
② 当該外国人らの国外源泉所得のうち、どこまでが課税対象となるのか
③ 住民税等についてはどのように扱えば良いのかについてご教示いただきたい。

回答

① 外国人従業員についても源泉徴収を行うべきであるが、「居住者」と「非居住者」のいずれかで扱いが異なる。

② 国外源泉所得については、当該外国人が「居住者」と「非居住者」の区別に加えて、「永住者」か「非永住者」かで扱いが異なる。

③ 住民税については、原則として「居住者」についてのみ課税され、特別徴収する必要がある。

解説

1 源泉徴収の方法

(1) 我が国の所得税法は、日本に居住する個人を「居住者」と「非居住者」に区分し、それぞれ異なる課税方法と課税範囲を適用している。企業が外国人労働者に給与等を支払う場合にも源泉徴収が必要であるが、当該外国人が「居住者」と「非居住者」のいずれに該当するかで、源泉徴収される金額の算出方法が異なる。

 当該外国人労働者が、①日本国内に「住所」を有する者、及び②日本での滞在期間が1年以上と予定される者は「居住者」と判定され、「居住者」と判定されない者はすべて「非居住者」と判定されることになる。

 まず、①の「住所」を国内に有しているかどうかについて、民法は「各人の生活の本拠をその者の住所とする」としており、生活の本拠であるかどうかは客観的な事実によって判定されることになる。したがって、当該外国人労働者の生活の本拠が日本国内にあれば「居住者」と判定される。

 次に、②の「日本での滞在期間が1年以上と予定される者」については、日本国内で就労するために来日する外国人は原則としてこれに該当するものとして、「居住者」と推定される。

(2) 以上の判断から当該外国人が「居住者」と認められた場合には、日本人労働者の場合とまったく同じ方法で源泉徴収を行えば良い。

 他方、「非居住者」と判断される場合は、給与等から源泉徴収する所得税率は原則として一律20%とされている。「非居住者」は年末調整の対象者からも除外されているので、年末に納税額の過不足調整をする必要もない。

(3)なお、外国人の出身国が我が国と別途、租税条約を締結している場合(米国など)は、短期滞在者に対して課税が免除されるケースもあるので、その点には注意していただきたい。

2 国外源泉所得の課税対象の範囲

(1)源泉徴収額を算出する際に課税対象となる所得の範囲は、さらに「居住者」が「永住者」か「非永住者」のいずれかによって異なることになる。ここに「非永住者」とは、居住者のうち日本国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内に日本国に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいい、「永住者」とは、居住者のうち非永住者以外の個人をいう。

(2)外国人労働者が「居住者かつ永住者」と判断された場合は、国内・国外に関係なく、原則としてすべての所得が課税の対象とされる。例え、外国での労働やサービスの提供に対する給与等で、外国企業から支払われ外国の銀行口座へ振り込まれた所得であっても、日本の所得税の課税対象となる。

(3)外国人労働者が、「居住者だが非永住者」と判断された場合には、日本国内で生じた所得のすべてと、外国で生じた所得のうち日本国内で支払われたもの及び日本国内に送金されたものが課税対象とされる。つまり、国内源泉所得はすべてが課税されるが、国外源泉所得のうち支払いが外国で行われるもの、日本に送金されないものについては日本の課税対象とはならない。

(4)外国人労働者が「非居住者」と判断される場合には、国内で生じた所得のみが課税対象となる。外国人労働者が外国で行った労働やサービスの提供に対する給与等は、その支払いがどこで行われようと、また日本に送金されていようがいまいが、日本での課税対象とならない。

3 住民税の取り扱い

(1)住民税に関しても、外国人労働者が「居住者」されるか「非居住者」とされるかで扱いが大きく異なる。

 まず、「非居住者」は、原則として住民税は非課税である。これは居住していない以上当然である。但し、日本に住んでいない非居住者に関しても、日本国内に事務所か家屋を所有している場合には、住民税のうちの均等割の部分についてのみ課税される。

 これに対して「居住者」は、「居住している」以上、住民税の支払義務がある。但し、住民税は原則として、その年の1月1日時点に日本に住んでいる者に、前年の所得から算出した税額を課税するので、1月1日の時点で、未だ来日していないときや、まだ学生で所得がない場合には、その年の住民税に関しては課税対象にならない。

 なお、居住者として住民税の納税義務があり、12月末までに出国する場合には、それまでに未払分の税額を納める必要がある。

(2)また、外国人労働者を雇用している企業は、住民税についても日本人労働者同様、毎月給与等からの天引きを行って、これを翌月の10日までに市町村に納める特別徴収をしなければならない。所得税とは違い、天引きする金額については市町村で計算してくれるので、企業側では税額計算をする必要はない。指定された金額を、単純に給与等から天引きすればよく、年末調整を行う必要もない。