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第20 社会保険等の適用~加入のメリット説明を 超過滞在でも労災対象に~

問題

当社は、建設業を営んでいる株式会社であるが、現在、以下の問題が発生している。どのように対処すれば良いか。

① 当社では、外国人Aの採用を検討しているが、Aは雇用期間が短いこともあって、雇用保険及び社会保険に加入することを拒否している。当社はこれらの保険に加入しないでAを採用することができるか。

② 当社の外国人従業員Bは、一ヶ月前に、うっかり在留期間を徒過させてしまったことが判明した。その上、先日、運悪くBは、建設現場で足を滑らせて重傷を負ってしまった。現在、Bから労災申請をするよう求められているが、在留期間を徒過しているBに対しても労災申請をしなければならないか。

③ 当社の外国人Cは、母国に妻がいて、先般、母国の診療所で病気の治療を受けたので、健康保険で3割負担にしてもらいたいと言ってきている。そのようなことができるか。

回答

① 会社は、雇用保険及び社会保険に加入しないで外国人Aを採用することはできない。

② 会社は、外国人Bがオーバーステイであったとしても労災申請をしなければならない。

③ 外国人Cの妻が健康保険の被扶養者に認定されれば健康保険の3割負担としてもらえる可能性がある。

解説

①について

 社会保険や雇用保険は、日本国憲法上、日本国民に保障された生存権を実現するために制度化されたものであるが、公共の福祉や人種の平等の観点から、外国人労働者も原則として全員がこれらに加入しなければならないことになっている。

 しかし、外国人の中には加入に抵抗して、雇用保険や社会保険の適用をしないように要求してくる者もいる。これは、我が国の保険料が自国の給与水準に比して高額だと感じて、その分も給与として受領したいと考えることや、年金保険料が掛け捨てになっていると思っていることなどの理由に基づいているようである。

 しかし、雇用保険や社会保険は、企業及び労働者に課せられた法的義務であり、外国人労働者の要求を入れて加入手続を行わないと、会社側が法的責任を追及されることもあるから注意が必要である。

 このような場合には、加入に抵抗している外国人労働者に保険に加入することで得られるメリットについて説明することが重要である。すなわち、雇用保険については、従業員が退職した後、生活の安定のため、一定の雇用期間がある者に対して失業中の期間給付を行うものであること、健康保険については、病気や怪我・出産で会社の仕事を休んだときに治療費と生活の保障のための休業給付があること、年金に関しては、通常の老齢年金の他、重大な障害で働けなくなったときの保障があること、更に外国人には、帰国したときには脱退一時金の給付があることなど様々なメリットが得られることを十分に説明することが大切である。

 大抵は、これだけの事情を説明すると雇用保険と社会保険への加入を認めることが多いが、それでも加入に抵抗を示す外国人もいないわけではない。このような外国人は、日本の諸制度に対する不満があり、また、自分の不加入によって会社に不利益があっても良いと考えている人物であり、採用しても益は少ないから雇用しない方が得策である。

 よって、当該会社においては、外国人Aに対して、雇用保険及び社会保険のメリットについて十分に説明して、納得が得られれば採用し、そうでなければ雇用を断念することが妥当である。

②について

 労災保険については、一部の例外的な扱いの事業所を除いてすべての事業所が適用対象とされ、また外国人も加入対象となる。その際、在留資格は特に考慮されることはない。

 したがって、在留期限が経過して日本に在留し続けている外国人労働者にも労災保険が適用となる。不法就労中の外国人が業務中に事故に遭ったにもかかわらず、会社が労災申請をしないと罰則を課されることもあるから注意が必要である。

 たとえ不法就労者の労災申請を労働基準監督署にしたとしても、労働者保護のために、悪質なケースを除いて入国管理局に通報するようなことはないと言われているから、速やかな労災申請が必要である。したがって、当該会社は、オーバーステイとなってしまっている外国人Bについて、その求めに応じて労災申請の手続きをするべきである。

③について

健康保険では、加入者本人が扶養している家族や親族(被扶養者)にも、健康保険の保障が及ぶ。そして、この被扶養者には、一定の条件を満たせば、保険に加入している本人(被保険者)と同居していなくても認められる場合があり、さらに、日本に居住していなくても被扶養者として認定されることがある。

 すなわち、本国に居住している親族を、日本で健康保険に加入している外国人労働者の被扶養者として認定してもらえれば、現地で被扶養者が病院で診療を受けた場合、一旦、医療費を全額自己負担した後、日本で保険加入者が申請手続きを行うことで医療費の7割までを払い戻してもらうことが可能となる。

 但し、ここでいう7割というのは、日本で同様の医療を受けた場合の医療費の7割という意味であり、実際に現地で支払った医療費が日本よりも高額であった場合には、日本の医療費の7割までしか請求できない。また、現地の医療費の方が日本のそれより低額であった場合には、現地の医療費の7割となる。

 したがって、外国人Cについては、母国にいる妻が健康保険にいう被扶養者として認定されれば、現地でかかった医療費の7割を健康保険によって負担してもらえる可能性がある。