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第19 退職と解雇~迅速な必要文書発行を 整理解雇4要件に基づき判断~

問題

当社では、昨今の円高の影響を受けて受注が激減し、リストラの必要に迫られたため退職勧奨を行ったところ、日本人従業員複数名の他に外国人従業員A及びBがこれに応じてきた。それでもコスト削減が必要であったことから、日本人従業員より先に外国人従業員C及びDの整理解雇も行った。

そうしたしたところ、1ヶ月ほどしてから外国人ユニオンから団体交渉申入書が届けられ、今回行われたC及びDに対する解雇手続は整理解雇の要件を充たさず無効であるから直ちに復職させることを求めるとして、1週間後に当社会議室にて団体交渉を行うことを通告してきた。 当社としては、A及びBの退職に際してどのようなことを行えば良いか、またC及びDの団体交渉申し入れに対してどのような対応をすれば良いか。

回答

・A及びBの退職については、速やかに必要文書等の発行を行う等外国人従業員の退職に特有の手続を行う必要がある。

・C及びDの整理解雇は国籍による差別であり無効であるから復職させるか、退職させるなら相当額の金額を支払って和解すべきである。

解説

1 外国人従業員A及びBの退職について

外国人従業員が退職した場合には、日本人従業員の場合と同様に社会保険等各種保険の離職手続等の退職手続きが必要であるが、その他にも以下のような外国人従業員特有の手続きが必要である。 

①入国管理局に退職証明書を報告的に送付すること(但し、日本人の配偶者等、定住者及び永住者等の身分関係に基づく在留資格の場合は不要)。

外国人従業員が退職した後、退職した事実を入国管理局に報告することは、会社の法的義務ではない。しかし、退職した外国人が後日犯罪行為に関わったとして警察や入国管理局から事情聴取を受けることがあり、その原因が退職した外国人が入国管理局に転職に関する手続を適切に行っていないことにある場合がある。したがって、入国管理局に自発的に退職証明書を送付しておくことがリスク回避となることがあるので送付することが望ましい。

②外国人従業員への源泉徴収票及び退職証明書の発行
外国人従業員が転職した場合に、外国人が入国管理局に対して就労資格証明書交付申請や在留期間更新許可申請において、従来の就業先が発行した源泉徴収票と退職証明書が添付書類として交付が求められる。

これらの書類は退職後速やかに発行する必要があるものであり、発行しない場合には、外国人従業員の職業選択の自由を奪う行為として違法とされることがあるから注意が必要である。

③外国人雇用状況届出制度平成19年10月1日から「外国人雇用状況届出制度」が開始されている。
これは、特別永住者を除く外国人従業員の雇い入れと離職の際に、厚生労働大臣(ハローワーク)に対して行うものであり、事業主の義務である。この届出を怠ると30万円以下の罰金に処せられることがあるのでご注意願いたい。

④社会保険関係
退職した外国人が帰国する場合で、その厚生年金保険の加入期間が6ヶ月以上である場合は、加入期間に応じた脱退一時金の支給を請求することが可能である。これは出国後2年以内に脱退一時金の請求書と必要書類を社会保険業務センターに郵送することで手続が可能である。

2 外国人従業員C及びDからの団体交渉申入について

労働者は、労働組合法によって、日本国内で、
①労働組合を結成すること
②労働組合に加入すること
③労働組合が使用者に団体交渉を要求し、団体交渉を行うこと
④労働組合がストライキ

などの正当な争議行為を行うこと等の権利が保障されている。

これは、労働者が外国人であっても同様である。近年、従業員が、個人加入できる一般労組や合同労組などのいわゆるユニオンに加入するケースが増加しており、退職後にユニオンに相談して労働争議に発展することも多く発生している。

3 団体交渉の要求を受けた場合

組合員が日本人、外国人のいずれであっても、使用者は特段の正当事由のない限り、これに応じなければならない。しかし、だからといってその申し入れを無条件で受け入れる法的義務はない。

今回の団体交渉申入書にもユニオン側に都合良く「一週間後」と早めの期日が記載されているが、このような場合には、「諸般の事情により●月●日に団体交渉に応ずることはできません。×月×日までに文書にてご回答いたします。」と記載して、内容証明郵便などで回答するのが良い。そして、その上で弁護士に対応を相談して、しかるべき対応をすることが妥当である。

このような対応をせずに、団体交渉に応じないで放置していると、不当労働行為として、救済を都道府県庁労働委員会に申し立てられることもあるから注意が必要である。

4 団体交渉を行う場合

このような経緯を経て団体交渉を行う場合、この会社の場合には、日本人より先に外国人から整理解雇を行ったことの合法性が問題とされることになる。 整理解雇を行う場合には、下表の4要件を満たさない場合には行うことができない。 

①  整理解雇の必要性
人員削減しないと倒産に至るなどの高度な経営危機が存在する場合等、合理的運営上やむを得ない必要に基づくものであること。単に生産性向上を目指すといった程度では、整理解雇の必要性があるとは言えない。

②  整理解雇の回避努力
整理解雇は、リストラの最後の手段であり、会社は整理解雇を回避するため努力する義務がある。役員報酬カット、役員削減、新規採用の中止、時間外労働の規制、退職勧奨、希望退職勧奨等相当な努力が尽くされていなければならない。

③ 解雇基準・対象者選定の合理性
評価者の主観に左右されない客観的な基準に基づいて人選を行っていなければならない。

④ 労働者との協議
整理解雇を行うにあたって、労働者・労働組合と誠実かつ十分に協議し納得を得るような努力が必要である。 本件の会社の場合は、まず退職勧奨をするなど整理解雇回避努力を行っているものの、日本人従業員よりも先に外国人従業員から整理解雇しており、解雇基準・対象者選定が明らかに不合理である。また、かような行為は労働基準法第3条による差別禁止にも違反するものである。

したがって、本件会社が行ったC及びDに対する解雇は無効となる可能性が極めて高い。 よって、会社としては、ユニオンの要求に応じて、C及びDの復職に応ずるか、あるいは、どうしても辞めてもらいたいのなら誠実に交渉を行ってC及びDに相当額の金員を交付して和解するしかないであろう。