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第17  「日本人の配偶者等」の資格

問題

当社は、リラクゼーション施設を全国規模で展開している株式会社である。施術者の大半は日本人であるが、2年前に日本人男性の妻である中国人女性Aを施術者として雇用した。Aはもともと中国で10年間の経験があったこともあってみるみる頭角を現し、施術者に対する技術指導主任にまでになった。

ところが、先日、突然、警察から偽装結婚の疑いをかけられ、公正証書原本等不実記載罪・同行使罪の容疑で逮捕されてしまった。Aによると、夫である日本人男性とは、中国で正当に婚姻しており偽装結婚ではないが、現在は別居中とのことであった。

Aは、優秀で部下からの信頼も厚く、当社にとって不可欠の人材であり、これからも長く働いてもらいたい。当社はどのような対応をすれば良いか。

回答

・ 適式に婚姻した事実を証明して公正証書原本等不実記載罪・同行使罪の嫌疑を晴らす必要がある。

・ 婚姻実体が存在することを証明して「日本人の配偶者等」の在留資格を有することを証明する必要がある。

解説

1 在留資格「日本人の配偶者等」

入管法上認められる在留資格には、「人文知識・国際業務」や「技術」等の「活動に基づく在留資格」と、婚姻関係や親子関係に基づいて与えられる「身分関係に基づく在留資格」がある。

本件の中国人女性Aは、日本人男性の妻であるから、身分関係に基づく在留資格のうち「日本人の配偶者等」として在留資格を取得しているものと考えられる。「日本人の配偶者等」の在留資格は、活動に基づく在留資格と異なり、就労制限がなく日本人と同様に就労することができる。

日本人の配偶者になれば、容易に在留資格が与えられ、かつ就労制限もないことから、以前より、日本人と婚姻した事実がないのに婚姻したと偽って在留資格を取得して日本国内において就労するいわゆる「偽装結婚」が横行しており社会問題化していた。これを受けて当局も偽装結婚について取り締まりを強化して厳しく対処している。

2 偽装結婚について

今回、中国人女性Aが逮捕されたのは、両名が別居中ということもあり、婚姻した事実が無いにも関わらず内容虚偽の婚姻届を提出し戸籍に登載させたとして公正証書原本等不実記載罪、同行使罪に該当するとされたものと考えられる。偽装結婚であると認定されれば、同犯罪が成立するとともに、「日本人の配偶者等」の在留資格も取り消されてしまう。

したがって、かような嫌疑をかけられた場合には、何としても偽装結婚ではないことを証明できる証拠を多数集めて検察庁に提出して嫌疑を晴らすよう最大限の努力をしなければならない。

まず、婚姻の実体的要件を充足していることを証明する証拠としては、婚姻前に文通していた手紙やメール、交際していたときの記念写真やビデオ、両家の両親とともに撮影した写真、結婚式や披露宴の写真やビデオ、友人からのメッセージ、日本国内において同居していた期間中に共同生活をしていたことを証する写真やビデオ等々を取りそろえて提出すべきである。また婚姻の手続要件については、中国において適式に手続を行ったことを証する書類を取り寄せて提出しなければならない。

Aは既に逮捕されているのだから、すぐに弁護士を選任してAの接見に行かせて、これらの証拠の所在を確認し、中国の親族等が所持している場合には、大至急取り寄せて検察官に提出し、検察官に面会を求めて説明してもらう必要がある。

3 別居中であることについて

本件の場合は、偽装結婚の嫌疑を晴らすことができても、それだけでは不十分である。

従来の入管法でも、「日本人の配偶者等」の在留資格に該当するためには同居及び相互扶助の実体が必要とされている。また平成21年改正入管法では、従来の規定に在留資格取消事由を新たに追加して、「配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6月以上行わないで在留している」場合には、正当な理由のある場合を除いて在留資格取消事由とされることとなった(但し、改正法は平成24年7月頃施行予定であり、それまでは在留資格取消事由とはならない。)。

したがって、会社としては、Aと夫との別居がかかる事由に該当しないこと、即ち婚姻実体が存在することを証明する必要がある。婚姻実体の存否は、同居の有無、別居の場合の連絡の有無と程度、生活費の分担の有無や状況、別の異性との同居の有無、職種等の事情を総合的に考慮して判断される。以下場合を分けて検討する。

4 離婚協議のため別居となった場合

Aと日本人の夫が離婚に向けて協議中であるために別居となっていて、実体上夫婦相互に助け合いながら共同生活をしていく意思がないような場合は、原則として「日本人の配偶者等」の要件を欠くことになる。但し、軽度の夫婦喧嘩から別居に至っているだけである等、今後夫婦関係を修復できる可能性があるときは、「日本人の配偶者等」としての在留資格が認められる可能性があるので、その旨を証明できるように準備をすべきである。

このような事情がない場合には、このままでは「日本人の配偶者等」の在留資格該当性から外れてしまうことになるので、何の手続もしないでそのまま就労させることは妥当ではない。もっとも、「日本人の配偶者等」の在留期間が残っている場合には、その期間中に就労させても不法就労とはならない(但し、上述のように平成24年7月ころに施行された後は在留資格取消事由となるから注意を要する。)。

このような場合には、他の在留資格への変更を検討することになる。まず、Aは、リラクゼーション業の施術者として熟練した技術を有しているので、在留資格「技能」が認められないか問題となるが、「技能」とは、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務をいうので、これに該当するのは極めて困難であろう。

結局、この場合には、日本人と再婚して在留期間更新許可申請するか、永住者と再婚して在留資格変更許可申請を行うくらいしか方法はないであろう。この場合もくれぐれも偽装結婚とはならないように十分注意が必要である。

5 単身赴任のため別居となった場合

次に、日本人の夫が勤務する会社の業務命令で、単身赴任することとなった結果、別居せざるを得なかったような事情があるときは、夫が自宅に定期的に戻ってきている事実、夫婦間の携帯電話等の架電履歴、生活費送金の事実、夫の会社の業務命令書等を提出して、別居していても夫婦相互に助け合いながら共同生活をしていく意思があること等を証明する必要がある。

このような事実を証明できれば、婚姻実体があるものと認められ、「日本人の配偶者等」の在留資格が認められることになる。