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第15 業務委託契約~業務の継続性が要件 日本人と同等以上の報酬で~

質問

当社は、工業用機械製造メーカーで、資本金1億円、従業員200名規模で経営している甲株式会社である。国際競争が激化する中、より一層のコストダウンを図るため、ベトナム企業との取引を開始しようと検討している。

 当社にはベトナム語が話せる社員がいないので通訳が必要だが、これまで外国人を採用したことがなく正社員として採用することには不安がある。そこで、ベトナムの大学の理学部を卒業し、フリーランスで日本語とベトナム語の通訳業を営んでいるベトナム人A(実務経験2年)と、まずは期間を1年に限って業務委託契約を締結して通訳業務を行ってもらおうと考えているが、それは可能か。

 また、将来的には正社員の通訳も採用したいので、現在日本に留学中のベトナム人の中から適性ある学生を見つけたいが、それは可能か。

回答

ベトナム人Aについては、甲株式会社において通訳が継続的に必要性であることや、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上の報酬を受けること等を証明することで在留資格を取得できる可能性がある。

 また、甲株式会社は、留学生インターシップ制度の利用により見込みのある学生を見い出すことが便宜である。

解説

1 ベトナム人Aについて

甲社は、ベトナム人Aと業務委託契約を締結して通訳を行わせたいと考えているので、「人文知識・国際業務」の在留資格を取得できるかが問題となる。

(1) 公私の機関との契約
 まず、入管法上「人文知識・国際業務」の在留資格が認められるためには、「本邦の公私の機関との契約」に基づいて行われることが必要である。ここにいう「契約」とは、必ずしも雇用契約に限られるものではなく、請負契約や委任契約でもよく、個人事業主との契約でも良いし、その契約関係は複数であっても良い。

 しかし、在留資格が認められれば、日本において長期的に在留することになるから、「特定の機関」と「継続的」な契約を締結している場合でなければならない。ベトナム人Aとは、特定の会社である甲株式会社と期間を1年とする業務委託契約を締結するというのであるから、かかる要件は充足していると評価して良いであろう。

 但し、甲株式会社は、これからベトナム企業と取引しようとしているのであり、通訳を使用した実績がないから、在留資格許可申請時には、本当に通訳が必要なのか調査されるであろう。したがって、ベトナム進出事業計画書など、通訳の必要性を立証する資料を十分に用意して申請に臨む必要がある。

 また、入管法上は、就職先企業の安定性・継続性は直接には規定されていないが、出入国管理方法及び難民認定法施行規則が、就職先の登記事項証明書、損益計算書及び事業内容説明を要求しているから、甲株式会社の安定性・継続性を立証することも必要である。

(2) 「人文知識」と「国際業務」の許可基準
 次に、「人文知識・国際業務」の許可基準については、翻訳、通訳、広報、宣伝、海外取引業務等の「国際業務」に該当する業務に従事する場合であっても、当該外国人が大学等においてこれらの業務に従事するのに必要な科目を専攻していたときは、「人文知識」として許可される。例えば、マスコミ論を専攻していた者が広報の業務に就く場合には、「人文知識」として許可されることになる。

 他方、自然科学を専攻していた者が海外取引業に従事する場合には、「国際業務」としての基準により判断される。ベトナム人Aはベトナムの大学の理学部を卒業しており、これに通訳業を行わせたいということであるから、「国際業務」としての基準によって判断されることになる。

 「国際業務」として許可されるには、通常は3年以上の実務経験を有することが要求されるが、ベトナム人Aは実務経験は2年に過ぎない。しかし、入管法は、例外として、大学を卒業した者が翻訳、通訳、語学の指導に関わる業務に従事する場合には、3年の実務経験は不要とされる。これは、大学卒業程度の教育があれば、母国語に関する翻訳や通訳を行うことに通常は支障がないと認められるからである。

 したがって、ベトナム人Aは実務経験2年でも、ベトナムの大学を卒業しているから「国際業務」として許可される可能性はある。但し、日本語能力を証明するため日本語能力検定1級又は2級程度緒は必要とされると思われる。

(3) 報酬の要件
 次に、在留資格「人文知識・国際業務」において、在留資格が認められるためには、「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上」の報酬を受ける場合でなければならない。外国人と業務委託契約を締結する場合は、その委託料が同種の業務を日本人が従業員として行う場合の平均賃金と比較して同等額以上であるかどうかを判断する。

 契約が複数ある場合には、その契約金額の合計額で判断することとされている。したがって、ベトナム人Aが受ける報酬がこれに該当する場合には、在留資格が認められる可能性がある。

2 インターンシップの受け入れ

(1) 留学生インターンシップの利用
 近年、外国人労働者を雇用したことがないがその必要性がある会社が増えてきているが、このような場合には留学生インターンシップ制度を利用するのも一つの方法である。

 インターンシップとは、大学などに在籍している学生が、企業などで自らの専攻や将来の職業選択に活かすために、長期休暇などを利用して職業体験ができる制度を言う。

 留学生インターンシップ制度は、卒業後に日本での就労を希望する外国人留学生が増加しているのに、日本企業側での受け入れ態勢が十分とはいえない状況にあったことから、平成20年度から厚生労働省が導入した。

(2) 留学生インターンシップの申し込み
 留学生インターンシップの利用は、東京、名古屋及び大阪に設置されている「外国人雇用サービスセンター」で申し込むことができる。申し込むと、外国人雇用サービスセンターが同制度に登録している留学生の中から適性を判断して、本人の意思を確認した上で企業側に受け入れを勧奨してくれることになっている。

 受け入れた後、インターンとして就労してもらった業務に対しては賃金は支払う。この制度については、全国の国公私立大学等に情報提供がなされていて、企業側、留学生側双方の利用費用は無料である。また、インターンシップ期間中の傷害・損害責任保険の保険料を国が負担することとなっている。

(3)留学生インターンシップの活用
 甲株式会社も、留学生インターンシップ制度を利用すれば、比較的容易にインターンシップ生を受け入れて、大学卒業後の採否の判断に役立てることができるであろう。