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第13 留学生の新卒採用~事業の安定性が要件 専攻と業務に関連性必要~

【質問】

私は、ソフトウエア開発をしているA株式会社(資本金1000万円、年間売上9億円、従業員50名)の採用担当をしている。残念ながら直前期は売上総利益が赤字となってしまったが、来期は、日本の大学で情報工学科を卒業する外国人留学生Bと、日本語学科を卒業する外国人留学生Cを新規採用して、両名にソフトウエア開発業務を担当させようとしている。当社は、外国人BCを採用できるか。

【回答】

① A社が担当させようとしている業務はソフトウエア開発であり、情報工学科を卒業するBは業務との関連性があるので在留資格変更が許可される。日本語学科を卒業するCは業務との関連性がなく在留資格変更は許可されない(通訳・翻訳業務なら可能)。

 ② A社の直前期の売上総利益が赤字であったとしても、事業の継続性が認められて外国人留学生を採用できる場合がある。

【解説】

1 外国人留学生を採用する場合の問題点

(1) 学歴要件と在留資格
 外国人BCは、現在、在留資格「留学」により本邦に在留しており、原則として就労資格を有しないので、BCを採用するには在留資格を変更する必要がある。在留資格のうち「研究」「教育」「技術」及び「人文知識・国際業務」は、「大学を卒業し又はこれと同等以上の教育を受け」ていることが在留資格変更許可の基準となる。

 大学には4年制の大学の他、大学院や放送大学等も含まれるが、原則として短期大学以上の卒業が求められる。

(2) 担当予定業務と専攻科目
 しかし、大学等を卒業して学歴要件さえクリアすれば、どのような業務でも担当させることができるわけではない。外国人が大学等で専攻していた科目と、採用後外国人に実際に担当させる業務との間に関連性を有していることが必要である。

 質問事例の場合には、外国人Bは大学で情報工学を専攻しており、従事させる業務はソフトウエア開発であるから両者に関連性が認められるから在留資格「技術」への変更が許可されるであろう。

 しかし、外国人Cは日本語を専攻しており、ソフトウエア開発業務との関連性が認められないので在留資格変更は認められない。もっとも、Cについても、従事させる業務を翻訳や通訳業務とするのであれば、専攻科目と担当業務との間に関連性が認められるので、在留資格「人文知識・国際業務」への変更が許可されるであろう。

 このように、留学のため本邦に在留する外国人を採用する際には、当該外国人に従事させる業務が、その学歴と専門的知識や能力に基づいて行われるものかどうかによって判断されることになるので、採用担当者が留学生を採用する際には、専攻科目と実際に従事させる業務との間の関連性を十分に検討することが重要である。

(3) 在留資格変更許可申請手続
 B及びCが、在留資格変更許可申請を行う際には、学歴と従熟する業務との関連性を証明するため、大学の卒業証明書や成績証明書を添付する必要がある。専攻科目と担当予定業務が必ずしも合致しないことがあり、そのような場合には、別途両者の関連性を証明できる資料を添付して申請することになる。

2 相当性(事業の安定性・継続性)

(1) 相当性が要求される理由
 外国人B及びCの在留資格変更が許可されるためには以上の要件に加えて、本邦で稼働することに相当性、すなわち当該外国人が本邦に在留する際に継続性・安定性を有していることを要する。

 入管法がこのような要件を課すのは、いかに優秀な外国人でも雇用予定の会社の経営状態が悪く、じきに倒産してしまいそうな会社であれば、当該外国人も早晩失業してしまい、入管法第1条が規定する「出入国の公正な管理を図る」という趣旨を実現できなくなるからである。

 そこで、入管法は、在留資格変更許可の審査の際に、雇用予定の会社が外国人を安定的に継続的に雇用できること、すなわち相当性の要件を要求したのである。

(2) 判断基準
 事業の安定性・継続性は、以下の①から⑦を基準として、当該会社に外国人を雇用できるだけのレベルに到達しているか否かを判断する。

  ①資本金の大小
  ②営業活動により得られる売上高
  ③粗利益
  ④従業員数(すでに外国人従業員がいる場合にはその内訳)
  ⑤営業種別、営業品目、本社、支店、営業所等の施設状況
  ⑥既存の会社の場合には決算内容、新規の会社の場合には事業計画
  ⑦今後の事業活動が適正かつ確実に行われることの可能性

(3) 赤字会社の外国人採用の可否
 A社は、資本金1000万円、年間売上9億円、従業員50名というのであるから、相当程度の安定性を有しているといえる。しかし、直前期の売上総利益が赤字だったことから事業の継続性の要件を充足するか問題がある。

 この点については、直前期の決算の結果だけを重視するのではなく、直前期と前々期の2期分の決算の結果に基づいて、今後の事業活動が適正かつ確実に行われる可能性があるか(判断基準⑦)も考慮して判断される。

 具体的には、直前期の売上総利益が赤字であっても、前々期の売上総利益が黒字で、且つ、直前期末に剰余金が存在する場合には、事業の継続性ありと評価される。また、仮に直前期末に剰余金がなくても、直前期末に欠損金がない場合にも事業の継続性ありと評価されている。

 したがって、A社もこのような場合に該当すれば事業の継続性ありと認められ、外国人BCを採用できることとなる。