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第11 雇用契約書と就業規則 

1 母国語による書面作成

外国人は一般に日本人に比べて契約書の締結を重要視しており、自分が契約書にサインすればその契約を遵守する法律上の義務が発生するが、単なる口約束では義務は生じないと考える傾向にある。

 また、労働環境は国によって千差万別であり、外国人が日本で勤務する場合、日本の勤務環境などに慣れていないため、日本人であれば当然知っているような事でも知らない場合があり、日本の常識が通用しないことも多々見受けられ、トラブルに発展することが多い。

 したがって、このようなトラブルに陥らないようにするため、予め雇用契約書と就業規則をしっかり作成しておくことが重要である。雇用契約書や就業規則を作成する際には、日本文のものとともに雇用する外国人の母国語など当該外国人が理解できる言語で作成することが重要である。

 外国人が理解できない言語で作成しても、後日、訴訟になると契約が無効とされたり、取り消されたりすることになる可能性があるのでご注意いただきたい。

2 雇用契約書の記載事項

わが国では、労働基準法により、日本人を雇う場合と外国人を雇う場合にかかわらず、雇用契約締結の際に一定の労働条件を明示することが義務付けられている。

 労働契約の期間、就業の場所・従事すべき業務、始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働(早出・残業等)の有無、休憩時間、休日、賃金に関する事項、退職や解雇に関する事項などは必ず明示しなければならない。

 労働条件の明示の際には、厚生労働省のホームページに「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」が掲載されており参考になる。英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、インドネシア語、ベトナム語版が用意されているので活用していただきたい。 

3 雇用契約の開始時期

在留資格取得申請の際には雇用契約書を提出しなくてはならないが、いつ許可になるかは申請してみなければ判明しない。契約書に入社日を記入しても、許可された日によって日付が前後する可能性があるから注意が必要である。

 また、在留資格取得ができなかった場合には、雇用契約が無効になる旨の記載もしておくことも大切である。

4 雇用契約の期間

雇用契約について期間を定める場合の上限は3年である。就労ができる在留資格の期限は1年か3年であることが多いので、例えば、1年の在留資格を取得している場合に、2年間の雇用契約を締結した場合には在留資格を更新する必要がある。

 契約更新の際にトラブルに発展することも多いので、契約更新の有無、契約を更新する場合の判断基準も具体的に明示することが重要である。

5 給料の額・支払方法

月給制か週給制か、残業代や手当ての計算方法、賞与の有無、交通費支給の有無、退職金の有無、昇給や昇進の有無等は、日本人であると外国人であるとを問わず労働者にとってもっとも関心がある事項であるから明確に規定しておく必要がある。

 また、外国人は、日本の社会保険や税金のシステムを理解しておらず、社会保険料や税金の控除後の金額(手取り額)がいくらになるのか解っていないことも多いので、事前に十分に説明しておいた方が良い。更に、住居手当、渡航費用や引越代の支給の有無などでもトラブルになることもあるので、事前に明確にしておくべきである。

 なお、就労可能な在留資格取得の要件として日本人と同等の給料を得ることが明記されている場合もあるからその点はご注意いただきたい。

6 労働時間・休日・有給休暇

外国人は労働時間にシビアなことが多く、始業時・終業時が何時か、休憩時間が何時間か、土日・祝祭日は休日となるか等は重大な関心事であり、明確に定めておく必要がある。

 日本人であれば、多少の残業や休日出勤は仕方ないと思って文句を言わないこともあるが、外国人をこれと同じように扱うととんだしっぺ返しを食らうこともあるから注意していただきたい。

 また、お盆休みや正月休みの有無、病欠した場合は有給か、休暇申請手続きなども詳細に取り決めておくべきである。

7 業務内容・勤務場所

日本人との雇用契約では契約書の中に業務内容を詳細に記載することはあまりないが、外国人の中には契約書に記載のない業務はやらないという人もいて、上司がやきもきすることがある。

 したがって、想定し得る業務内容、勤務場所、出張の有無等はできる限り詳細に記入し、記載事項以外の業務が発生したり、転勤してもらったりすることもある旨を明確に記載して、外国人に理解させておくことが重要である。

8 雇用契約の解除

外国人は日本人よりも労働者としての権利意識が強いことが多いので、どのような場合に解雇できるのか明確に定めておく必要がある。また雇用される側から退職を申し出る場合には何日前にどのような手続きで行う必要があるのか、退職する際の後任者への引き継ぎの方法等を明確にしておくことも重要である。

 この点は特にトラブルの多い事項なので様々なケースを想定して慎重に規定しておくべきであろう。

9 雇用契約終了確認書

退職・解雇にかかわらず、雇用契約を終了させるときは「雇用終了確認書」を作成して双方署名をしておくことが望ましい。雇用終了確認書には、退職にあたって支払われる手当の金額、有給休暇の買い上げ、会社所有物の返還、退職後の守秘義務の継続、同業他社への就職の制限、後日訴訟を起こさないことの約束、雇用終了確認書記載事項以外には債権債務のないことの確認等の文言を入れておくと良い。

10 就業規則

従業員が10名以上の事業所では就業規則の作成が義務付けられている。日本人の従業員のために作成した就業規則をそのまま外国人従業員にも適用しても良いが、外国人には当てはまらない場合には、雇用契約等の中で修正する必要がある。

 外国人の従業員が多い場合に、外国人従業員のみに適用される就業規則を作成することも考えられるが、労働基準法は国籍等による差別的扱いを禁止しているので注意が必要である。

 このような場合には、外国人に適用される就業規則を作成するのではなく、職種や雇用形態によって区別して、いかなる国籍の者に対しても平等に適用される就業規則を作成するよう心がけるべきである