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第1 入管法改正の概要~「点」から「線」で把握 企業は情報収集に協力を~

第1 はじめに

入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)については、平成21年7月8日に開催された第171回国会において,平成21年改正法が成立し,同月15日に公布された。この改正は、今後の会社等における外国人社員の労務管理にも大きな影響がある。

 そこで、今後24回にわたって、入管法改正を中心として外国人社員の労務管理や人材活用について解説を行うこととし、第1回目の本講では、今回の入管法改正において、外国人社員の労務管理に関連する事項としてどのような改正がなされたのか、その主要ポイントについて俯瞰することとしたい。

第2 改正入管法の概要

1 中長期在留外国人を継続的に把握するための措置

(1)背景
 従来の在留管理制度では,外国人に上陸許可や在留期間更新許可の付与をする場合など、在留に関する審査を行う際に情報把握を行い、謂わば「点」において、外国人に関する必要な情報を取得するという方法をとってきた。そして、在留期間の途中の事情変更は,市区町村における外国人登録制度の運用の中で把握していた。

 しかしながら,近時、日本の国際化が進展し、外国人の新規入国者が激増して,日本に在留する外国人の数も著しく増加するに伴い、在留外国人の中には,日本国内に安定した基盤がなく,転職・転居を繰り返す者も多くなってきた。

 ところが、従来の制度では,在留期間の途中で情報に変更があっても外国人が法務大臣に直接届け出る義務がないこと,外国人登録制度では,同制度を通じて把握した情報について法務大臣に調査を行う権限がないこと、外国人登録法上の申請義務を怠っても、入管法上の処分を受ける仕組みになっていないため、在留外国人の側に正確な届出をしなければならないというモチベーションが働きにくいなどの問題点が存在していた。

 そのため、我が国において、外国人の居住実態などの在留状況を正確に把握することが困難となり、また、外国人に対する公正な在留管理や、市区町村の外国人に対する適切な行政サービスを提供することも難しくなるという問題が生ずることとなった。

 そこで、このような問題点を是正するため、適法な在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人を対象として,法務大臣が公正な在留管理に必要な情報を、継続的に、謂わば「線」として把握する制度を構築し、他方で、適法に在留する外国人については、その利便性を向上させるために,在留期間の上限の伸長や再入国許可制度の見直しなどを行うこととした。

(2)在留カード
 かかる改正の目玉となるのが在留カードである。すなわち、新たな在留管理制度においては,中長期在留者に対し,氏名等の基本的身分特定事項,在留資格,在留期間等を記載した在留カードを交付し,一定の重要事項に変更があった場合には法務大臣に届け出る義務を負わせることとしたのである。

 そして、在留カードに記載された情報の正確性を担保するために、所属機関による届出,事実の調査及び在留資格取消制度の見直しなどの諸制度を設けることとし、これにより外国人に関する情報を継続的に把握をすることを可能としたのである。

2 外国人研修制度の見直しに係る措置

我が国の制度の中には、国際協力に資するため、技能、技術及び知識を発展途上国等に移転することを目的とする研修・技能制度が存在する。

 しかし、従来、研修生や技能実習生の受入れ機関の中には,これらの者を労働力不足を補うために使用したり,実質的には低賃金の労働者として扱うなど,研修・技能実習制度の趣旨を逸脱した事例が発生していた。

 そこで、改正法では、新たに「技能実習」に係る在留資格を整備し,技能実習の在留資格をもって在留する外国人が、労働関係法令の適用を受けられるよう措置を講じ、外国人の人権を保護し得るようにした。

3 不法就労助長行為等に対処するための措置

従来、例えば、外国人の事業主が不法滞在者を不法に就労させて利益を得たような場合には、不法滞在者は退去強制される一方で、利益を得た外国人事業主は退去強制されない不合理があった。

 そこで、改正入管法では、不法就労助長行為を退去強制事由とした。また、資格外活動許可を受けていない外国人による不法就労に的確に対処するため,特に悪質な第73条の罪(資格外活動に係わる罪)により禁錮以上の刑に処せられたことも退去強制事由とした。

 さらに、資格外活動許可を受けた者の中には,許可条件に違反して就労する者も散見されたことから,当該許可を取り消すことができることとした。

第3 まとめ

改正法の主要な点は、これまで外国人の情報を「点」で把握してきたものを、継続的に「線」として把握しようとしたことにある。したがって、企業としても、外国人に対する情報把握に協力しなければならな場面もこれまでより多く発生しするであろうし、また、外国人が継続的に届出義務を履行しているかチェックしなければならない場面も増えていくものと考えられる。

 また、本講で記載した以外にも様々な規制がなされており、これを知らないで従前同様の労務管理を行っていると思わぬ事態に立ち至ることもあろう。

 したがって、今後、外国人を採用している企業は、改正入管法をよく理解して、外国人社員に対して指導を行うなど十分な対応ができるよう準備しておくことが重要である。 そこで、次講以下では、改正入管法について、更に詳細に解説して行くこととしたい